2019 Fiscal Year Research-status Report
アナパイレキシア(能動的な低体温)における熱産生抑制機構
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17K08583
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
大坂 寿雅 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 栄養・代謝研究部, 研究員 (30152101)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロスタグランジンE2 / 発熱 / 終板器官周囲部 / ラット / 酸素消費率 |
Outline of Annual Research Achievements |
発熱の開始や維持には視床下部視索前野の終板器官周囲部にあるPGE2受容体を介することが、最も重要な共通ステップであるとされている。ラットをウレタン・クロラロースで麻酔し、この部位にガラスピペットを用いてPGE2を420 fmol注入した。これによりベースラインの熱産生率に比べて1.5倍以上の大きさの熱産生反応が誘起された脳部位において発熱に関与するPGE2受容体サブタイプ(EP1, EP2, EP3, EP4)を同定する目的で下記の実験を行った。 EP3受容体作動薬であるsulprostoneを投与すると有意な熱産生反応が誘起され、EP3受容体拮抗薬であるL-789106をPGE2投与の5分前に投与しておくと、その後のPGE2による熱産生反応の大きさは減弱した。L-789106は10%DMSOに溶解して投与したが、L-789106を含まない10%DMSOのみの前投与ではPGE2による熱産生反応に影響しなかった。EP4受容体作動薬であるrivenprostを投与しても熱産生反応が起きた。EP4受容体拮抗薬であるONO-AE3-208をPGE2投与前投与しておくと、その後のPGE2による熱産生反応の大きさは顕著に減弱した。EP1受容体作動薬であるiloprostを投与すると微弱ではあるが有意な熱産生反応が誘起された。一方、EP1受容体拮抗薬であるAH6809を前投与してもPGE2による反応に影響しなかった。iloprostはEP1 および prostacyclin 受容体に高親和性ではあるが、EP3とEP4受容体にも親和性があるので、iloprostの作用はこれらの受容体を介している可能性がある。EP2受容体作動薬であるbutaprostを投与しても熱産生に影響しなかった。これらの結果からはEP4とEP3受容体の両方がPGE2による熱産生反応への関与が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で行っているような終板器官およびその周囲部に先端径20ミクロン程度の大きさの三連ガラスピペットを用いてフェムトモルレベルのPGE2やその受容体拮抗薬をピコモルレベルで同一部位に投与した実験はこれまで報告されておらず、投与する物質、量とタイミングを決めるのに手間取っている。EP3受容体拮抗薬として知られるL-789106は水溶性がきわめて低く、DMSOを用いて溶解した後に生理食塩水で希釈して投与した報告があるが、本研究において試したところ希釈度が高ければ再結晶が生じ、DMSOの最終濃度が高い場合には溶媒自体がPGE2反応を阻害することが判明し、適切な投与法に苦慮している。また、EP1およびEP2受容体拮抗薬であるAH6809も溶解度が0.1mM程度と低く、現在までに得られている結果がfalse negativeの恐れがあり、他の拮抗薬や作動薬の作用を調べる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
EP1,EP2受容体に非特異的に拮抗するAH6809の投与量を増やして前投与したときのPGE2反応を調べる。別のEP1受容体拮抗薬であるONO-8130やEP1受容体作動薬であるiloprost注入による熱産生率への影響を明らかにする。EP3受容体拮抗薬であるL-798106の溶解法をこれまでとは異なる処方を試すとともに、別のEP3受容体拮抗薬であるL-826266の作用も調べる。 PGE2は様々な原因に由来する発熱の最終の共通媒介物とされるが、より自然な細菌感染時の発熱においても、それを介するPGE2受容体サブタイプを明らかにするために、大腸菌の細胞壁に由来する発熱物質であるリポ多糖類を静脈内投与したときの発熱反応について、EP3とEP4受容体拮抗薬を終板器官周囲部に前投与しておいたときの反応を溶媒と前投与時の発熱反応と比較することにより明らかにする。
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Causes of Carryover |
PGE2の受容体サブタイプに特異的な作動薬や拮抗薬の選定や溶解法の決定に手間取っているので、適切な薬物を購入する費用として次年度に繰り越すこととしたため。
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