2017 Fiscal Year Research-status Report
EPRAPを標的とした炎症性疾患に対する新規医療の開発
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17K08592
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南 学 京都大学, 医学研究科, 准教授 (90511907)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 慢性炎症 / 翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージの活性化による慢性的な炎症刺激は、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患のみならず、がんや動脈硬化、肥満などの様々な疾患の発症や増悪に関与し、これら慢性難治性疾患の治療標的として期待が大きい。我々は疾患モデルやヒト検体を用いた検討から、EP4受容体結合蛋白として見いだされたEPRAPが、マクロファージの炎症性活性化を抑制し、慢性炎症の病態生理に極めて重要であること、さらにPP2AによるEPRAPの脱リン酸化が抗炎症作用発現に重要で、その指標となることを見いだした (Nakatsuji M, et al. PLoS Genet. 2015; Higuchi S, et al. J Immunol. 2016)。本研究は慢性炎症制御による新規医療の開発を目指し、EPRAPおよびその関連分子を標的とした、創薬および診断法の開発に関する探索的研究を行うものである。 平成29年度は、EPRAPの抗炎症作用発現に係わる分子メカニズムの検討をさらに進めるため、蛍光蛋白で標識した野生型及び一連の変異型リコンビナントEPRAP発現プラスミドの作成に取り組んだ。リン酸化EPRAP特異抗体作成も同様に進めている。一方、脳内炎症モデルを用いた検討から、EPRAP遺伝子欠損による炎症抑制が認められ、脳内免疫担当細胞であるミクログリアに対してEPRAPは催炎症性に働くことを我々は以前明らかにしたが (Fujikawa R, et al. Am J Pathol. 2016)、平成29年度は、さらに、アルツハイマー病モデルを用いた検討から、EPRAP遺伝子欠損による脳内炎症抑制が、アルツハイマー病の周辺症状である不安を改善することを明らかにした (Fujikawa R, et al. Am J Pathol. 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性炎症性難治疾患に対するEPRAPおよびその関連分子を標的とした創薬および診断法の開発にはEPRAPの抗炎症作用発現に係わる分子メカニズムの解明が欠かせない。平成29年度は、このために必要なマテリアル(プラスミド、抗体等)の作成に注力し、一定の成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、EPRAPの抗炎症作用発現に係わる分子メカニズムの解明に注力し、そこで得られた知見を生かし、研究計画に従い、EPRAPを特異的に賦活化しうるEP4受容体選択的アゴニストのスクリーニングにも着手する。 一方、末梢マクロファージと中枢ミクログリアに対するEPRAPの相反する作用については、その分子機序を明らかにすることによって、安全性の高いEPRAP経路の特異的賦活化薬の開発に通ずるとともに、免疫担当細胞としてのマクロファージとミクログリアの機能的差異をEPRAPが担っている可能性があり生物学的にも極めて興味深く、本研究の重要な課題の一つと考えられる。
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Causes of Carryover |
理由: 平成29年度は、EPRAPの抗炎症作用発現に係わる分子メカニズムの検討を進めるため、一連のコンビナントEPRAP発現プラスミドの作成やEPRAPリン酸化抗体の作成に注力し、一定の成果を得た。研究経費の内訳では、その殆どを実際の研究の遂行に必要な物品費(研究消耗品購入費)にあて、新規購入を極力控え同等品への切り替えなどの努力を行い、最小限の支出にとどめた。 次年度の使用計画: 次年度も、引き続きEPRAPの抗炎症作用発現に係わる分子メカニズムの解明に注力し、EPRAPを特異的に賦活化しうる、EP4受容体選択的アゴニストのスクリーニングにも着手する予定である。本年度の繰越分を有効に活用し、十分な研究成果を得るべく、研究全体を俯瞰し計画的にかつ適切に執行する。
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