2019 Fiscal Year Annual Research Report
Drug discovery targeting EPRAP for chronic inflammatory diseases
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17K08592
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南 学 京都大学, 医学研究科, 准教授 (90511907)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 慢性炎症 / 糖代謝 / 脳内炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージの活性化による慢性的な炎症刺激は、がんや動脈硬化、肥満、認知症などの様々な疾患の発症や増悪に関与し、これら慢性難治性疾患の治療標的として期待が大きい。我々は疾患モデルやヒト検体を用いた検討から、EP4受容体結合蛋白として見いだされたEPRAPが、マクロファージの炎症性活性化を抑制し、慢性炎症の病態生理に極めて重要であること、さらにprotein phosphatase 2AによるEPRAPの脱リン酸化が、EPRAPによる抗炎症作用発現に重要であることを見いだした。 本研究で、我々は、EPRAP欠損マウスを用いて食事誘導性肥満モデルを作成し、肥満における慢性炎症でのEPRAPの機能を検討した。その結果、肥満の状態では、野生型と比較しEPRAP欠損マウスにおける全身の炎症マーカーの発現等に有意差は無く、むしろEPRAP欠損マウスでは肝臓での糖新生が著明に抑制され、耐糖能異常が有意に改善されることを明らかにした (Higuchi S, et al. 2019)。本研究成果から、EPRAPは、各臓器や組織、細胞特異的な機能を有し、生体防御や精神神経系、エネルギー代謝など実に様々な面で生体の恒常性維持 (ホメオスタシス) に極めて重要な働きをしていることが明らかとなった。 一方、アルツハイマー病モデルを用いた検討の結果、EPRAP遺伝子欠損は脳内炎症を抑制し、アルツハイマー病の周辺症状である不安を改善することが明らかとなった (Fujikawa R, et al. 2017)。末梢マクロファージと中枢ミクログリアに対するEPRAPの相反する作用については、今後その分子機序を明らかにすることによって、安全性の高いEPRAP経路の特異的賦活化薬の開発に通ずるとともに、免疫担当細胞としてのマクロファージとミクログリアの機能的差異をEPRAPが担っている可能性が示唆された。
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