2018 Fiscal Year Research-status Report
S1Pシグナリングによる癌炎症環境における悪玉エクソソーム成熟機構の解明
Project/Area Number |
17K08594
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
梶本 武利 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00509953)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | スフィンゴシン1-リン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、引き続き生体細胞内局所でのS1P動態のリアルタイムイメージングを行うための、蛍光共鳴エネルキー移動(FRET)の原理を用いたS1Pセンサーの開発および改良を行った。平成29年度に作製したプロトタイプでは、蛍光光度計を用いた評価によりin vitroでのS1Pの検出に成功した。またさらにこのS1Pセンサーを培養細胞に遺伝子導入し、FRET蛍光イメージング顕微鏡システムを用いて評価を行ったところ、細胞内でのS1P検出にも成功した。世界に先駆けて細胞内でのS1P動態のイメージングに成功したことは画期的である。ただプロトタイプのS1Pに対する応答性は強いものではなく、生体の炎症環境における1細胞レベルでのS1P定量にはより高感度のS1Pセンサーが求められる。そこで平成30年度には、プロトタイプの最適化およびより鋭敏なS1Pセンサーの探索を行った。FRETによるS1PセンサーはS1P結合ドメインをシアン蛍光タンパク質(CFP)及び黄色蛍光タンパク質(YFP)でサンドイッチした構造となっており、高性能のS1Pセンサーの構築にはS1P結合ドメインのS1P結合強度および立体構造変化の大きさが重要となる。そこで、プロトタイプについてはS1P結合ドメインの立体構造情報を基にしてドメイン領域の長さを変化させ、S1P応答性の適正化を行った。その結果、より高感度なS1Pセンサーの取得に成功した。また、in silicoドッキングシミュレーションなどの解析により上記プロトタイプとは別のS1P結合ドメインを探索したところ、新たなS1P結合ドメインの候補を発見した。新規S1P結合ドメインについては、CFP、YFPを用いたFRETによるS1Pセンサーを新たに構築し、現在S1P応答性の性能評価を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、本研究課題の最終的な目標の達成に向けて、「細胞内局所でのS1Pイメージング技術の開発」に関する研究を引き続き推進し、結果S1Pに応答するより高感度なS1Pセンサーの構築に成功した。ただS1Pの検出感度は最終的な目標である生体でのS1P定量のレベルには達しておらず、生体イメージングを実現する鋭敏なS1Pセンサーの完成に向けてさらなる開発および改良が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、生体イメージングを実現するS1Pセンサーの開発を完遂し、転移前炎症領域における1細胞レベルでのS1P定量およびエクソソーム積荷ソーティング亢進細胞の同定を行う。これまでの研究によりS1Pセンサーの性能は確実に上がってきているため、引き続きS1Pセンサーの開発および改良を推進し、生体における1細胞レベルでのS1P定量の検出感度を実現する。その後、完成したS1P センサーに多胞体エンドソーム局在化タグを融合したコンストラクトを作製し、多胞体エンドソーム局所化S1Pセンサーを用いて、炎症環境において多胞体エンドソーム上でのS1P産生およびエクソソームへの積荷タンパク質のソーティングが亢進した細胞種の同定を行う。
|
Causes of Carryover |
S1Pセンサーの開発において予定よりもin silico解析に時間を要したため、細胞実験等に必要な試薬類の支出が下がった。令和元年度の研究費は、平成30年度に引き続き主に消耗品費として使用する。
|
Research Products
(9 results)