2017 Fiscal Year Research-status Report
進行癌におけるArf6経路を介した免疫チェックポイントPD-L1の制御機構の解明
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17K08614
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橋本 あり 北海道大学, 医学研究院, 助教 (60390803)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Arf6 / PD-L1 / 免疫チェックポイント / 免疫回避 / 癌免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの癌種において免疫監視機構から逃避するために免疫チェックポイント分子PD-L1を発現する。しかしながら、PD-L1のエピジェネティック因子による発現制御や細胞内動態の分子機序は未だ不明な点が多い。これまでに、乳癌及び腎癌を例とした解析から、低分子量G蛋白質 Arf6を基軸としたシグナル経路が間葉形質を獲得した進行癌の浸潤・転移及び薬剤耐性に関与することを明らかにしてきた。最近、Arf6経路が間葉形質を有する膵癌の浸潤・転移性にも関与することを見出した。本年度において、1)エピジェネティック因子EZH2によるPD-L1の遺伝子発現の分子機序の解析、2)Arf6経路によるPD-L1の細胞内動態制御の解析、3)モデルマウスを用いたArf6経路による腫瘍形成能の解析を行った。1)に関して、ヒト腎癌細胞においてEZH2の発現を抑制した細胞株を樹立し、RNA-Seqによる網羅的解析を行った。解析ソフト並びにTCGA database解析によりPD-L1遺伝子プロモーター上に結合する転写抑制に関わる候補分子の同定を行った。2)に関して、間葉形質を有する膵癌細胞を用いた解析から、KRAS及びp53変異によるArf6-AMAP1経路の高発現及び活性化がPD-L1の動態制御に関与すること、膵癌の悪性化/予後不良に関わるPDGF刺激によるArf6-AMAP1経路の活性化はPD-L1の細胞表面量を促進していることを見出した。3)に関して、膵癌モデルマウス由来の細胞KPCを用いた解析から、AMAP1の発現を抑制することにより同系マウスに移植した癌細胞の腫瘍増殖が抑制されること、一方、in vitro細胞培養や免疫欠損マウスへの移植実験ではコントロールとの間に増殖及び腫瘍形性能に差が見られない結果を得た。従って、間葉形質を獲得した膵癌においてArf6経路が免疫監視の抑制に寄与している知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エピジェネティック因子EZH2によるPD-L1の遺伝子発現に関わる因子を同定したこと、また、Arf6経路によるPD-L1の細胞内動態に関し、PDGF刺激によるArf6-AMAP1経路の活性化がPD-L1のリサイクリングに関わることで細胞表面量を促進していることを見い出しことは、当初の計画通りである。さらに、次年度の予定であったモデルマウスを用いたArf6経路による腫瘍形成能の解析から、Arf6経路が免疫監視の抑制に寄与している知見を得ることが出来たので、おおむね計画通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
PD-L1の遺伝子発現に関して同定した転写抑制に関わる候補分子がEZH2によりエピジェネティックなヒストンの化学修飾を受けているか否か等の遺伝子発現制御の詳細を明らかにすると共にPD-L1を介した癌細胞の免疫監視からの逃避に関する検討を進める。Arf6経路によるPD-L1の細胞内動態に関して、メバロン酸経路阻害剤スタチンがPD-L1の細胞膜の局在を減少させることを見い出していることからPD-L1の細胞内局在に関わるRabの同定、Arf6経路との関連を当初の研究計画に従って進め、分子実態を明らかにする。また、代謝リプログラミングは、エピジェネティックな機序による遺伝子群の発現変化を伴うことが指摘されていることから、代謝阻害剤によるPD-L1及びArf6経路を構成する分子群の細胞内動態制御や遺伝子発現に与える影響を検討する。さらに、Arf6経路構成因子及びPD-L1制御に関わる候補因子と免疫シナプス形成との関連を明らかにすると共に、PD-1/PD-L1阻害抗体を用いた腫瘍形性能及び腫瘍組織浸潤免疫細胞に与える影響とArf6経路との関連を解析し、生物学的意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度に代謝阻害剤を用いたPD-L1及びArf6経路を構成する分子群の細胞内動態制御や遺伝子発現に与える影響を検討すると共に動物実験を行うことを計画しており、それらの試薬及び動物実験費用を考慮し、繰越を行った。 Arf6経路阻害に関わる代謝阻害剤を用い、PD-L1の細胞内動態制御機構並びにその分子機序の解析を行う。さらに、癌細胞と細胞障害性T細胞の間に形成される免疫シナプスの影響について検討する。また、免疫チェックポイント分子阻害抗体を用いた腫瘍形性能及び腫瘍組織浸潤免疫細胞に与える影響とArf6経路との関連を解析する。これらの実験に有効活用する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Prognostic significance of erythrocyte protein band 4.1-like5 expression in upper urinary tract urothelial carcinoma.2017
Author(s)
Daimon T, Kosaka T, Kikuchi E, Mikami S, Miyazaki Y, Hashimoto A, Hashimoto S, Mizuno R, Miyajima A, Okada Y, Sabe H, and Oya M.
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Journal Title
Urol Oncol
Volume: 547
Pages: 543.e17-543.e24
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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