2020 Fiscal Year Research-status Report
進行癌におけるArf6経路を介した免疫チェックポイントPD-L1の制御機構の解明
Project/Area Number |
17K08614
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橋本 あり 北海道大学, 医学研究院, 助教 (60390803)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Arf6 / PD-L1 / 免疫チェクポイント / 免疫回避 / 癌免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、癌の浸潤・転移等に関わる低分子量G蛋白質ARF6を基軸としたARF6-AMAP1経路による免疫チェックポイント分子PD-L1の制御機構を明らかにし、免疫回避の分子機序の解明を目的とする。これまでに、ARF6-AMAP1経路が膵癌における浸潤・転移性だけではなく免疫回避にも関与し、その機序の一つとしてPD-L1の細胞膜表面へのリサイクリングの亢進に関与することを明らかにしてきた。さらに、エピジェネティック因子EZH2がARF6及びPD-L1の発現制御に関与することを見出し、その制御候補分子の同定を行った。 2020年度において、膵癌の実臨床におけるARF6-AMAP1経路とPD-L1発現との関連、並びに、膵癌組織に特徴的な線維化との関連について解析を行った。膵癌患者の病理学的解析から、AMAP1の高発現は全生存率及び無病生存率共に統計的に有意な差を持って減少することを見出した。また、膵癌組織におけるPD-L1の発現は予後不良となることが報告されているが、今回のcohort解析においても、PD-L1陽性は予後不良となり、AMAP1とPD-L1陽性は統計的に有意に相関することを見出した。さらに、膵癌モデルマウス由来細胞による腫瘍組織においても、AMAP1発現抑制によりPD-L1発現が有意に減少し、細胞表面のPD-L1レベルが減少することを明らかにした。これらの結果から、ヒト膵癌におけるAMAP1の高発現はPD-L1発現と統計的に有意に相関することが示された。一方、膵癌における間質反応の亢進(線維化)は、抗腫瘍免疫や抗癌剤による治療効果の減弱に関与し、免疫回避を間接的に亢進させる一要因と考えられる。AMAP1の高発現は線維化の亢進とも統計的に有意に相関することを明らかにした。これらの知見は、ARF6-AMAP1経路が多様な機序で免疫回避に関与している可能性を強く示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌患者並びに膵癌モデルマウスの腫瘍組織におけるARF6-AMAP1経路の高発現とPD-L1発現と相関があることを明らかにしたことは、当初計画していた研究の1つである。さらに、当初計画からの新たな展開としてARF6-AMAP1経路と免疫回避の分子機序について解析を進めていること、免疫回避の一要因である間質反応の亢進(線維化)との関連についても解析を進め、当該経路が線維化の亢進にも関与していることを明らかにし、ARF6-AMAP1経路による免疫回避への作用機序の多様性を示唆する重要な知見として論文発表することが出来た。今後、その分子機序の詳細を明らかにすることにより新しい視点からの膵癌における免疫回避の理解につながり、治療戦略の開発に寄与することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
ARF6-AMAP1経路によるPD-L1の細胞内動態の分子機序に関し、細胞内動態に関わる分子を見出しており、継続して解析を進める。さらに、Arf6-AMAP1経路による免疫回避の分子機序に関し、当該経路により変動する腫瘍組織における免疫細胞並びに液性因子を明らかにすると共に、液性因子の発現変動に関わる制御因子、さらには当該経路と発現制御因子を繋ぐ分子を同定し、Arf6-AMAP1経路による免疫回避の制御機構を明らかにしていく。得られた成果に基づいて、新規癌免疫療法の可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
本研究の新展開として、ARF6-AMAP1経路による免疫回避の分子機序に関わる制御因子のスクリーニングを行うため、High-throughput screeningシステムを用いたスクリーニングを共同研究で進める予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大防止措置により延期したため、繰越を行った。
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Research Products
(5 results)