2018 Fiscal Year Research-status Report
がん遺伝子を介した幹細胞性制御機構の新たな分子基盤の解明
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17K08626
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
赤木 紀之 金沢大学, 医学系, 准教授 (70532183)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 崇 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (50134622)
上田 篤 金沢大学, 医学系, 助教 (90728560)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / ES細胞 / がん遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
胚性幹細胞(ES細胞)は、初期胚に由来する細胞株で自己複製能と多分化能を保持した細胞株である。マウスES細胞は培地にサイトカインLIFを添加することで、未分化状態を維持したまま増殖する細胞株である。最近の研究から、がん細胞、特に低分化型のがん細胞の遺伝子発現様式は、ES細胞と類似していることが示されている。本研究では、「がん細胞とES細胞の類似性」に着目し、ES細胞の自己複製能と多分化能を制御する新たな分子基盤の解明を目指す。我々は、これまでの研究からがん遺伝子ETV4/5が、ES細胞の増殖能と多分化能を制御していることを報告し、またいくつかのがん組織で過剰発現しているBaf53aを遺伝子破壊すると、ES細胞の生存が停止することを報告している。本年度は、昨年度に引き続き、がん細胞で認められた変異型遺伝子をES細胞に導入し、ES細胞の多分化能や自己複製能へどのように影響するか検証した。 変異型転写因子は、野生型転写因子と比べて非常に高い転写活性化能を保持していた。変異型転写因子をES細胞に遺伝子導入し、自己複製能への影響を評価した。その結果、変異型転写因子を遺伝子導入したES細胞は、LIFを添加しなくても未分化状態が維持され、LIF非依存的な自己複製が認められた。興味深いことに、LIFの有無により増殖能が大きく変化し、変異型転写因子を導入したES細胞は、LIF刺激があると増殖能が低下し、LIF刺激がないと、増殖能が大きく亢進した。このことから、がん細胞で認められた変異型転写因子を導入されたES細胞は、外部からの刺激により増殖能が変化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「低分化型の悪性腫瘍ではES細胞様の遺伝子発現様式を示す」や「乳がん幹細胞画分では、ES細胞様の遺伝子発現が認められる」などの報告がなされている。このことから、多能性幹細胞とがん細胞では、共通の分子基盤の存在が考えられる。このような背景のもと、我々はがん遺伝子を介した幹細胞性制御機構の解明を推進してきた。その結果、がん細胞で認められた変異型転写因子が、マウスES細胞のLIFに依存しない自己複製を見出し、さらに増殖能を制御していることを解明した。このことから、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きがん遺伝子を介した幹細胞性制御機構の分子基盤を解明する。変異型転写因子を導入したES細胞と野生型ES細胞について、ChIP-seq解析を遂行することで、変異型転写因子特有な下流遺伝子群を同定する。得られた候補遺伝子の遺伝子破壊ES細胞を樹立し、変異型転写因子を導入しても、自己複製が維持されるか否かを検証する。また、ES細胞で認められた知見を、あらためてがん細胞に導入することで、がん細胞の幹細胞性獲得の分子機構の解明を目指す。
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Research Products
(5 results)