2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K08631
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 大輔 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (50422415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸管上皮細胞 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Mg2+トランスポーターとして働くCNNM4が腸管上皮の恒常性を制御する仕組みを明らかにするため、CNNM4欠損マウスの大腸よりクリプトを回収し、in vitroでの三次元培養を行った。回収したクリプトの大きさを比較したところ、CNNM4欠損マウスのクリプトは野生型マウスのものより小さかった。回収前の腸管組織ではクリプトの大きさに違いが見られないことから、CNNM4欠損マウスのクリプトは回収時の衝撃により崩れて小さくなったと考えられ、組織構造に何らかの変化が生じていることが示唆される。野生型マウスより回収したクリプトをマトリゲルの中に包埋すると、開いていた一端が次第に閉じて4時間後には球状のスフェロイドとなった。しかしCNNM4欠損マウスのクリプトの場合は、マトリゲルに包埋してから1時間後には多くのクリプトがすでにスフェロイド構造をとっていた。これらの培養を続けたところ、CNNM4欠損マウス由来のスフェロイドは、野生型マウス由来のそれと比較して有意に成長する速度が大きかった。また同数のクリプトを播種した場合、CNNM4欠損マウス由来のクリプトからは野生型マウス由来のそれと比較してより多くのスフェロイドが形成された。これらの結果から、CNNM4欠損マウス由来のクリプトにはスフェロイドを形成する能力を有する増殖性の未分化な細胞が多く含まれている可能性が考えられた。そこでクリプトをトリプシン処理することにより単一の細胞へと分離させ、個々の細胞がもつスフェロイドを形成する能力を調べたところ、CNNM4欠損マウスのクリプト野生型マウスのそれと比較してより多くのスフェロイドを形成する能力をもつ細胞が含まれていることがわかった。以上の結果からCNNM4は腸管上皮における多分化能を有する細胞の数を制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸管上皮の恒常性維持におけるマグネシウムの役割を明らかにするため、Mg2+トランスポーターCNNM4に注目し、遺伝子欠損マウスを用いた解析からCNNM4が腸管上皮において未分化な細胞の数を規定していることを明らかにした。CNNM4欠損細胞では細胞外への排出が妨げられることで細胞内マグネシウムが増加していたことから、細胞内マグネシウム量の調節が腸管上皮細胞の分化や増殖を制御している可能性が高い。このように当初の計画どおりマグネシウムが腸管上皮の恒常性制御に関与していることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
CNNM4遺伝子欠損マウスでは腸管上皮において未分化な細胞の数が増加していることが示唆された。そこでこのマウスで起きた幹細胞性の変化がどのような分子メカニズムで起きたのかを検討する。まずはCNNM4遺伝子欠損マウスにおいて腸管上皮の細胞構成がどのように変化したのか、マーカー分子の免疫染色やin situ hybridization法により明らかにしていく。またCNNM4遺伝子欠損マウスより回収した腸管上皮細胞に対して、マイクロアレイ法を用いて遺伝子発現を網羅的に解析しCNNM4遺伝子の欠損が遺伝子発現に与える影響を調べる。またCNNM4遺伝子の欠損は細胞内Mg2+の量を増加させることから、細胞内Mg2+量の調節が腸管上皮細胞の分化制御に重要だと考えられる。そこでCNNM4とは逆に細胞内へのMg2+流入に関与するTRPM6遺伝子を欠損させた腸管上皮細胞を作製し、細胞内Mg2+量の調節が果たす役割を調べる。またマグネシウム量を変化させた食餌をマウスに与え、腸管上皮に与える影響を個体および細胞レベルで検討する。
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Causes of Carryover |
オルガノイド培養を用いたCNNM4遺伝子欠損腸管上皮細胞の解析において、予想していたものとは別に興味深い表現型を見つけることができた。その表現型を詳細に解析していたので、当初予定していたマイクロアレイによる遺伝子発現の検討やその結果を元にした解析を行わなかった。次年度では、当初の計画どおりマイクロアレイを用いた解析を行う予定である。
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