2017 Fiscal Year Research-status Report
分泌性糖タンパク質Wnt5aの生体内動態及び動態制御機構の解明
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17K08633
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原田 武志 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (30362768)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ライブイメージング / Wnt5a / CRISPR |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29 年度はマウスWnt5a遺伝子の57番目のメチオニン残基と58番目のセリン残基をコードするexon3にVenus遺伝子をノックインしたマウス(Venus-Wnt5a KI)をCRISPR/Cas システムを用いて作製した。具体的な方法としては、Wnt5aのexon3に対するガイドRNA (gRNA)、gRNAの標的配列の前後の部分をアームとしたターゲッティングベクターを構築し、Cas9、sgRNAを発現するベクターと共にマウス受精卵にインジェクションした。22匹得られた産仔の中にPCRによりノックインされた個体がいることが確認された。得られたファウンダーマウスを野生型マウスと交配して得られたヘテロ接合体のF1マウスで、内在性のWnt5aが発現していることが報告されている組織(肺、心臓、胃、腎臓)において、Venus-Wnt5aが発現していることをウェスタンブロットにより確認した。また胎生14.5日齢の胎児において内在性のWnt5aが高発現している四肢や顔面の先端においてVenus-Wnt5aが発現していることを免疫染色により確認した。次にヘテロ接合体のF1マウス同士を交配させてホモ接合体のF2マウス(Venus-Wnt5a KI/KI)を得ようとしたが、生後3週間まで生存した産仔50匹の中にホモ接合体はいなかった。Wnt5aノックアウトマウスは胎生致死となることから、Venus-Wnt5aが生体内においてWnt5aとして機能していない可能性が示唆された。そこで、胎生14.5日齢の胎児を取り出して解析したところ、Venus-Wnt5a KI/KIは四肢の形成不全などWnt5aノックアウトマウスと同様の表現型を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、Venus-Wnt5aノックインマウスの作製と内在性のWnt5aが発現していることが報告されている組織(肺、心臓、胃、腎臓)におけるVenus-Wnt5aの発現の確認は平成29年度中に完了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
成体のVenus-Wnt5a KI/KIマウスは得られることは出来なかったので、Venus-Wnt5a KI/+のヘテロマウスを用いて今後の解析を行う。胎生期の間質の線維芽細胞から分泌されたWnt5aタンパク質の動態を明らかにするため、Venus-Wnt5aが標的細胞に取り込まれていく様子を経時的に観察する。胎生11.5日のVenus-Wnt5a KIマウスの胎児から単離した肢芽をin vitroで培養し、線維芽細胞が分泌するVenus-Wnt5aのライブイメージングを行う。成体ではDSS投与後の腸管の大腸潰瘍部線維芽細胞でWnt5aの発現が大きく上昇する。Venus-Wnt5a KIマウスにDSSを投与して、Venus-Wnt5aの発現がこれらの内在性のWnt5aの発現と同様に大腸潰瘍部線維芽細胞で上昇するか否かをまず確認する。発現の誘導を確認した後、Venus-Wnt5a KIマウスにDSSを投与して腸管炎症を引き起こす。腸管炎症を起こしたマウスの腸管を麻酔下で取り出し、二光子励起顕微鏡を用いて観察することにより腸管の大腸潰瘍部線維芽細胞が分泌するVenus-Wnt5aのライブイメージングを行う。胎生期の間質の線維芽細胞から分泌されたWnt5aタンパク質の動態と比較し、違いがあるか否かについて明らかにする。更にはセルソーターを用いてVenus-Wnt5a高発現線維芽細胞を単離する。Venus-Wnt5a高発現線維芽細胞とVenus-Wnt5a低発現線維芽細胞の遺伝子発現をRNAシークエンスにより比較することにより、Venus-Wnt5a高発現線維芽細胞で活性化しているシグナル伝達経路や発現の高い転写因子を同定する。同定したシグナル伝達経路の阻害剤や転写因子に対するsiRNAでWnt5a高発現線維芽細胞を処理して、Wnt5aの動態に与える影響についても検討する。
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Causes of Carryover |
研究計画が順調に進んでいたため、当該年度に消耗品を新たに買う必要が無くなったため。 今年度からVenus-Wnt5a KIマウスの生化学的解析やライブイメージングを行うために大量の消耗品が必要であり、消耗品費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)