2018 Fiscal Year Research-status Report
殺菌やレドックスシグナルに関わる活性酸素生成型NADPHオキシダーゼ成熟機構解明
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17K08637
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
宮野 佳 川崎医科大学, 医学部, 助教 (60444783)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 活性酸素 / Nox / レドックス / 糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
NADPHオキシダーゼ(Nox, NADPH oxidase)から生成される活性酸素は、殺菌や甲状腺ホルモンの合成、平衡感覚に必須の耳石の形成、さらにはレドックスシグナルにおけるシグナル分子(血圧調節や細胞増殖制御)として利用される。一方、Noxによる活性酸素が無秩序に生成されるとタンパク質や脂質を酸化し、DNAを損傷するため、様々な疾患を引き起こすことが知られている。そのためNoxは、適切な時間と空間に活性酸素を生成しなくてはならない。本研究では、Noxの「細胞膜への輸送」、「酵素の活性化」、「細胞外への活性酸素生成」すなわち成熟化機構の全容解明を目指すものである。平成30年度は、特に細胞へのNoxの膜輸送経路の解明を目指した。 一般に膜タンパク質は、小胞体で糖鎖を付加される(糖鎖修飾)。輸送の過程で、付加された糖鎖はゴルジ体で成熟化され、目的地である細胞膜に局在する膜タンパク質は、複合型の糖鎖を持つことになる(典型的な膜タンパク質輸送経路)。興味深いことに、Noxファミリーの中でもNox1やNox5が小胞体からゴルジ体への輸送をブロックしても細胞膜に局在し(“非”典型的な膜タンパク質輸送経路)、活性酸素を生成することを見出した。さらに本来糖鎖修飾を受けないNox5に糖鎖修飾付加のアミノ酸配列を導入したところ、Nox5の一部は典型的な膜タンパク質輸送経路を経て細胞膜に輸送されることを見出した。また、糖鎖修飾を受けられないNox2変異体は、わずかではあるが非典型的な膜タンパク質輸送経路を介して細胞膜に局在した。これらの結果は、Noxファミリーの輸送経路が翻訳後修飾の一種である糖鎖修飾の有無により選択されている可能性を示す。本成果は、Genes to Cells誌(Genes Cells. 2018 Jun;23(6):480-493)に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず成熟化の各ステップにおける分子メカニズムを明らかにしつつ、最終的にはNoxファミリーの活性酸素生成に至る成熟化過程の全容解明を目指すことを目標としている。研究計画の2年目である平成30年度では、これまでまったく知られていなかったNox5の細胞膜局在メカニズムについて明らかにした。Nox5は、糖鎖修飾を受ける他のNox(Nox1やNox2)や膜タンパク質(VSVGやCFTR)と異なり、小胞体からゴルジ体への輸送をブロックしても細胞膜に局在し、活性酸素を生成することを報告した(“非”典型的な膜タンパク質輸送経路を経る)。興味深いことに、本来糖鎖修飾を受けないNox5に糖鎖修飾付加のアミノ酸配列を導入したところ、一般的な膜タンパク質や他のNoxファミリーと同様に典型的な輸送経路を介して細胞膜に局在した。これは、膜タンパク質の輸送経路が翻訳後修飾の一種である糖鎖修飾により制御されている可能性を示唆する。この成果は、Noxファミリーの成熟化機構の全容の解明に寄与するだけでなく、糖鎖修飾を受けない他の膜タンパク質の細胞膜局在機構の理解にも繋がると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた成果をもとに、さらにNoxの成熟化の各ステップである(1)「細胞膜への輸送」、(2)「酵素の活性化」、(3)「細胞外への活性酸素生成」における分子メカニズムの基盤を明らかにすることを目指す。具体的には、(1) Noxの細胞膜への輸送について、Nox1~Nox4の輸送のキープレイヤーであるp22phoxの役割やN-glycosylationを含めた翻訳後修飾の役割、Nox5のp22phox非依存性の積極的な細胞膜局在メカニズムの解明を目指す。一方、他のNoxファミリーと異なりNox4が積極的に小胞体に留まることを見出しており、そのメカニズムや生理的な役割を明らかにする。(2) 細胞膜局在Noxの活性化について、特異的な活性化タンパク質がNox1~Nox3の構造変化も含めてどのように作用するのか、また恒常的なNox4活性が生じるメカニズムを明らかにすることを目指す。特に、Nox2とNox1の活性化に必須のactivatorタンパク質の作用機序について、詳細な解析を進める。(3) NoxによるROSの生成について、Noxファミリー間で異なるROSを生成するシステムについて、ROS生成に必要な電子伝達系に関わるアミノ酸残基の同定や活性化状態のNox構造情報の取得を行い、それらを基盤として明らかにすることを目指す。
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Research Products
(1 results)