2018 Fiscal Year Research-status Report
新規リン脂質輸送タンパク質の分子機構の解明とその破綻と疾患
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17K08642
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
堀端 康博 獨協医科大学, 医学部, 講師 (80392116)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リン脂質 / ミトコンドリア / 筋分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアはホスファチジルコリン(PC)を主要成分とするリン脂質二重膜で区画化されている。しかし、ミトコンドリアにはPCを合成する酵素が存在していないため、PCは脂質合成器官である小胞体から供給されなければならない。これまで申請者はミトコンドリアにPCを輸送すると考えられる新規輸送タンパク質STARD7を見出し、ミトコンドリアのPC保持や健全性維持に必須であることを報告した。今年度は骨格筋分化におけるSTARD7の役割を解明するため、マウス筋芽細胞株C2C12細胞やヒト初代筋芽細胞のSTARD7を欠損し、筋分化が受ける影響を解析した。 STARD7の細胞内局在を免疫蛍光染色で解析したところ、細胞質、ミトコンドリア内部、ミトコンドリア外膜外葉に局在していた。STARD7を欠損したC2C12細胞(KO細胞)をゲノム編集で樹立し、さらにSTARD7を再発現したレスキュー細胞(RES細胞)を樹立した。パーコール/ナイコデンツの密度勾配によりミトコンドリアを単離し、LC-MS/MSで解析した結果、KO細胞では野生型と比べてPCの量が有意に低下していた。ミトコンドリアの酸素消費速度をフラックスアナライザーを用いて解析したところ、KO細胞では野生型よりも有意に低下していた。以上の結果から、以前報告したHEPA-1細胞と同様に、C2C12細胞においてもSTARD7はミトコンドリアの恒常性に重要であることがわかった。筋分化を誘導したところ、KO細胞では筋管繊維の形成が著しく阻害された。同時にMHCやMyogeninなどの分化マーカーの発現が有意に低下していた。これら筋分化障害は、RES細胞ではほぼ完全に回復されていた。ヒト初代筋芽細胞のSTARD7をノックダウンしても同様な筋分化障害が見られた。以上からSTARD7は骨格筋分化において必須の役割を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、共同研究の申し込みがあり、そちらを優先させる必要があったので予定よりも研究が遅れた。しかし、上記の様にSTARD7を欠損した筋芽細胞を樹立し、この細胞を用いて筋分化における役割を明らかに出来ている。現在、論文投稿の準備中を進めているとともに、マウスを用いた実験の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの培養細胞を用いた研究により、STARD7は骨格筋分化において重要であることがわかってきた。今後はマウスを用いた個体レベルでの解析を進める。具体的には、IMPCからfloxマウス、ジャクソン研究所からCreマウスの凍結胚または凍結精子を取り寄せ、個体作製後、両者を掛け合わせて骨格筋特異的なSTARD7のノックアウトマウスを作製する予定である。また、STARD7のミトコンドリアにおける輸送機構をさらに詳細に解析するために、先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)による研究支援のもと免疫電子顕微鏡でSTARD7のミトコンドリアにおける詳細な分布について共同研究を進めている。
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Causes of Carryover |
他財団から助成金を獲得することができ、それを利用したので科研費補助金の使用額が予定より下回った。その他、高価な試薬は他の研究者から融通してもらったり、キャンペーンなどで試薬を安価に購入した。以上の理由で321,128円の次年度使用額が生じた
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Research Products
(4 results)