2017 Fiscal Year Research-status Report
非コードRNAによる生殖細胞ゲノムの恒常性維持機構
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17K08644
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村野 健作 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80535295)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アルゴノート / 小分子RNA / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖細胞系列で転移と増殖を繰り返すレトロトランスポゾンは、生命の次世代継承にとって脅威である。非コード小分子RNA(piRNA)とPIWIタンパク質の複合体は、配列情報と相補的なレトロトランスポゾンを抑制し、ゲノムの恒常性を維持している。本研究ではPIWI-piRNA経路の解析を通じて、宿主が非自己であるレトロトランスポゾンを寛容・承認し、「ゲノムの恒常性を維持しつつ進化していく過程」の理解を目的としている。生殖細胞に発現するPIWI-piRNA経路の機能は、倫理的な問題からヒトでの解析は困難であり、マウスを使った場合でも試料の少なさから生化学的解析が遅れている。そこで、本研究では機能的PIWI-piRNA経路を保持するヒトまたはマウス培養細胞株の確立を目指している。Fred Gage博士の研究チームは、霊長類であるヒト、ボノボ、チンパンジーのiPS細胞を構築し、RNA-seqによる遺伝子発現パターンを比較した。その結果、ヒトiPS細胞では、他の二つの霊長類iPS細胞に比べて、PIWI遺伝子の一つPIWIL2の発現量が高いことが明らかとなった。我々もヒトiPS細胞内でPIWIL2のmRNAを検出できた。以上の結果から、ヒトiPS細胞は我々の求める「機能的PIWI-piRNA経路を保持する培養細胞株」の第一候補となっている。しかしながら、この報告を含めてこれまでにヒトPIWIL2-piRNA複合体の実体は検出されていない。そこでヒトPIWIL2に対するモノクローナル抗体を作製した。残念ながらヒト精巣抽出液を用いたウェスタンブロッティング法ではヒトPIWIL2の発現を確認できるものの、ヒトiPS細胞でヒトPIWIL2の発現は検出できなかった。現在、ヒト精巣腫瘍由来細胞株に着目してヒトPIWIL2-piRNA複合体を発現する細胞株の探索を続けている
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、ヒトPIWIL2に対するモノクローナル抗体の作製に成功している。ヒトiPS細胞ではmRNAレベルでヒトPIWIL2の発現は確認できたものの、タンパク質としては発現していないことが明らかとなった。したがって我々の求める機能的PIWI-piRNA経路を保持する培養細胞株の候補から、ヒトiPS細胞は外れることになった。一方で、ヒト精巣抽出液由来のヒトPIWIL2タンパク質の検出ができていることから、我々の求める機能的PIWI-piRNA経路を保持する培養細胞株の探索の準備は整った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにmRNAレベルにおいてPIWIL2を発現する培養細胞株が多数報告されている。それら細胞株を取り寄せて、構築したヒトPIWIL2に対するモノクローナル抗体を用いて評価を行う。また、免疫沈降法により結合している小分子RNAの有無を評価することにより、我々の求める機能的PIWI-piRNA経路を保持する培養細胞株の探索を続ける。また、培養細胞の改変により求める細胞株の構築を試みる。転写因子A-MYBはマウスにおいてpiRNA前駆体をはじめ、PIWI-piRNA経路に関わる遺伝子(Piwi1, Piwil2, MitoPld, Mov10l1, Vasa等)の転写反応を正に制御しているが明らかとなっている。したがって転写因子A-MYBの強制発現により機能的PIWI-piRNA経路を保持する細胞株が得られると考えている。候補となっている細胞株にA-MYBの強制発現を予定している。
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