2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08648
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
白木原 琢哉 北里大学, 医学部, 助教 (30548756)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | EMT / チロシンリン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
TGF-βによって誘導されるEMT(上皮間葉移行)の形態変化や細胞運動能をFGFシグナルが増強するeEMT(enhanced-EMT)と名付けた現象に関与するチロシンリン酸化シグナルの解析を行っている。 前年度に続きeEMT特異的なチロシンリン酸化タンパク質の探索を行った。前年度は、安定同位体標識をしたリジンを含む培地中でTGF-β単独によるtEMT(TGF-β induced-EMT)もしくはTGF-β+FGF-2によるeEMTを誘導した後、細胞抽出液の免疫沈降法で濃縮したチロシンリン酸化タンパク質をLC-MSで同定した(SILAC法)。しかし、免疫沈降やバッファー置換、透析などの操作を含む試料調製中に大半の試料を失ってしまい、測定に用いたタンパク質は総細胞抽出液の0.01%程度だった。 そこで今年度は免疫沈降法やタンパク質回収のプロトコールに大幅な改良を加えた。質量分析に適した細胞抽出液は免疫沈降法には適さないため、界面活性剤の種類や条件、タンパク質濃縮方法の条件検討を半年間行い、10月に二度目のSILAC法での解析を行った。今回は測定段階で前回と比べて5から10倍の濃度の試料を用いることができ、信頼性の高いデータを収集することができた。約2200の総タンパク質と約550のリン酸化タンパク質に発現量の差が認められた。123のリン酸化タンパク質が二度のSILAC法とも同定されていた。その中には細胞運動、細胞間接着、細胞骨格に関わるタンパク質や受容体、転写因子等も含まれている。ノックダウンや阻害剤による機能解析と、抗体を用いてのリン酸化の確認を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質量分析によるリン酸化タンパク質の同定は初年度の一度で完了する予定だった。しかし、SILAC培地を用いたより精度の高い探索を目指した結果、プロトコールが複雑化して合計三回の質量分析を行うこととなった。予定より進捗が遅れているものの良質なデータが得られており、最終年度は予定通り候補タンパク質の機能解析に専念できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
二度のSILAC法からeEMTとtEMTでリン酸化状態の異なる約780のタンパク質が同定できている。eEMTで特にリン酸化状態の亢進しているタンパク質に着目して、shRNAノックダウン細胞株を作製し、eEMT誘導に影響を及ぼすタンパク質の絞り込みを行う。また、細胞運動に関わる酵素も含まれており、阻害剤を用いた解析も予定している。チロシンリン酸化がeEMTの状態、癌細胞の運動能・浸潤能に寄与することを示し、今年度中の学会発表や論文投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
年度末から次年度にかけて参加した国際学会参加費等が手続き上年度内には間に合わず、次年度使用となったため。
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