2018 Fiscal Year Research-status Report
スプライシングバリアントによる病態形成メカニズムの解明と新規治療ターゲットの創出
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17K08660
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
眞田 文博 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (30722227)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 選択的スプライシングバリアント / ペリオスチン / 治療抵抗性乳がん / 慢性心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性炎症性疾患において病態形成に関与する細胞外マトリックスたんぱく質であるペリオスチンは、そのC末端に4つの選択的スプライシングバリアントを有し、各々のバリアントが異なる作用を持つ。我々はこれまでに、乳がん治療抵抗性獲得のメカニズムとしてペリオスチンスプライシングバリアントが関与すること、悪性黒色腫において転移にペリオスチンバリアントの変化が伴うこと、慢性心不全の拡張期病態形成に特異的なペリオスチンバリアントが関与することを報告してきた。本年度は昨年度に作成したスプライシングバリアントを可視化するスプライシングベクターおよびバリアント特異的中和抗体、アンチセンスオリゴによるエクソンスキッピング、バリアント特異的ノックアウトマウスを用いて以下の検討を行った。 1)ペリオスチン高発現ヒトトリプルネガティブ乳がん株(SUM159PT)においいてスプライシングベクターを導入すると、エクソン17、21含有・非含有細胞集団が存在する。2)エクソン17含有SUM159PT細胞集団は非含有細胞集団と比較して、TGFβシグナルが増強されること、3)エクソン21を含むペリオスチンは抗癌剤投与後に発現が亢進し、エクソン21を含有する細胞集団は非含有細胞集団と比較してIL-6、IL-8といった炎症・自己複製能に関与するサイトカインの発現が高いこと、4)エクソンスキッピングによるエクソン17または21スキッピングは上記の変化を抑制することが明らかとなった。5)さらに抗癌剤抵抗性乳がんに対する中和抗体の臨床応用を目指し中和抗体のヒト化およびIn Cell ELISA、In vivo治療抵抗性乳がんモデルを用いた中和抗体の選択を行なった(現在継続中)。第二のペリオスチン(新たな治療標的となるスプライシングバリアント)を発見する目的で、食塩感受性ダールラットおよび臨床心不全サンプルを用いたRNA-シークエンスを現在行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スプライシングベクターの作成、発現確認。ペリオスチン発現株による内因性ペリオスチンの反映、スプライシングベクターを用いた細胞集団の選択および機能解析。ラット・ヒト心不全サンプルの回収・解析お行った。当初の予定通り研究が進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は選択した細胞集団を用いて詳細なメカニズムの解明とスプライシングファクター結合部位の同定、さらに適応疾患拡大を目指し、他のペリオスチン関連癌(神経膠芽腫等)への中和抗体投与を予定している。さらに心不全における新たな治療標的スプライシングバリアントの探索を継続して行なう。この研究から安全で疾患選択性の高い治療標的が見つかるものと考えている。
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