2017 Fiscal Year Research-status Report
免疫細胞におけるLTA4水解酵素の生化学的機能解析
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17K08664
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
古賀 友紹 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (30615092)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生理活性脂質 / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
生理活性脂質ロイコトリエンB4 (LTB4) は、好中球やマクロファージ、樹状細胞が産生する炎症反応を促進する脂質メディエーターである。一方で、その産生酵素であるLTA4水解酵素 (LTA4H) は、全身でその発現が見られ、LTB4産生酵素活性以外の機能があるのではと推定されていたが、長年の謎であった。本研究では、独自に樹立したLTA4H遺伝子欠損マウスを用いて、各種免疫疾患モデルと免疫細胞を用いて、①LTA4HのLTB4以外の代謝物の同定、②その機能解析・受容体同定、③材料となる脂肪酸の質の解析、に重点を置き研究を行う。平成29年度は、1) LTA4H遺伝子欠損マウスの樹立、2) 免疫細胞における生理活性脂質産生とLTA4Hの機能解析、3) LTA4H遺伝子欠損マウスの表現型解析を行う計画にしていた。1)の課題においては、LTA4H遺伝子欠損マウスをCRISPR/Cas9システムにより2系統樹立することに成功し、バッククロスを3世代行なった。2)の課題に関しては、LTA4H KO樹状細胞においてLTB4が産生されなくなることは期待通りであったが、測定した脂質メディエーターはほとんどが変化なしという結果だった。その中で、機能未知の脂質代謝物KUMAMONは、やはり、LTA4H欠損により産生されなくなることがわかった。その後、KUMAMONはマクロファージからも産生されるが、好中球からは産生されないなど、細胞特異的な産生パターンがあることがわかった。3)の課題に関して、両系統のLTA4H遺伝子欠損マウスは、羸痩の表現型を示すことが明らかになった。LTB4受容体であるBLT1遺伝子欠損マウスでは、そのような表現型が出ないため、これは、LTB4産生以外のLTA4Hの機能を反映したものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた年次計画のうち、1) LTA4H遺伝子欠損マウスの樹立においては概ね順調に進展し、CRISPR/Cas9システムによりLTA4H遺伝子欠損マウスの樹立に成功したこと、3) LTA4H遺伝子欠損マウスの表現型解析においては、期待以上の表現型を得ることに成功し、LTA4HのLTB4産生酵素としての機能以上の役割を見出している。LTA4Hと代謝に関しては直接的なエビデンスがまだないので、とても興味深い知見と考えられる。2) 免疫細胞における生理活性脂質産生とLTA4Hの機能解析においては、新規脂質メディエーターKUMAMONの同定と、産生細胞の特定を進めることができたが、産生経路の特定には至らなかったため、当初の計画以上に進んでいるとは言い難いが、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現状でおおむね順調にいっているので、まずは計画通りに進行させることを目標に実験を行う。また、産生細胞の特定ができてきたので、それらを比較研究することで産生経路の特定を推進できると考えている。研究計画では免疫疾患を標的にする予定であったが、今回、羸痩の表現型を掴んだので、それらも加えて解析を進めることで、当初予定したよりも大きな幅を持ったアウトプットを得られる可能性があるため、それらの方向にも推進したい。
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Research Products
(3 results)