2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒストンを中心としたタンパク質新規アシル化の制御機構と生理的意義の解明
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17K08669
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西田 友哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10581449)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アシル化 / ケトン体 / βハイドロキシ酪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンを含むタンパクのアシル化については多数報告されているが、ケトン体であるβハイドロキシ酪酸(BOHB)によるリシン残基のβハイドロキシ酪酸化(bhb-K)は最近報告された注目すべきアシル化である。申請者はbhb-Kに対する特異的抗体を入手し、まず培養細胞であるHEK293TにおいてBOHB刺激を行って、濃度依存性にbhb-Kが誘導されるか否かを確認した。その結果、HEK293T細胞においては、時間依存性にwhole cell lysateでのbhb-Kの増加が観察された一方で、他のアシル化であるアセチル化(ac-K)に関しては変化を認めなかった。また、同様の実験系においてヒストンの精製を行い、ヒストンH3K9特異的bhb化に対する抗体でその修飾の変化を検討したところ、whole cell lysateに比べてより明瞭に当該修飾の増加が確認された。この場合においても、H3K9のアセチル化についてはBOHB投与の有無による変化は認められなかった。したがって、培地中のBOHB濃度の増加に伴いbhb-Kが増加することが明らかとなった。一方で、同様の変化がin vivoにおいても存在するか否かを検討するため、マウスのケトン体増加が認められる飢餓条件下において、ケトン体産生部位である肝臓におけるbhb-K修飾について検討を行った。その結果、飢餓刺激後には血中BOHBの増加が認められ、それに伴ってwhole cell lysateでのbhb-Kの増加、ac-Kの増加、マロニル化(mal-K)の減少が確認された。また、肝臓からヒストンを精製して行った検討でも、同様にH3K9のbhb-Kの明らかな増加が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生理的に有意義と考えられるbhb-Kに関して、培養細胞の系のみならずin vivoにおいても飢餓刺激に伴うケトン体上昇による変化が認められることを確認した。今後の研究の進捗にあたって、特異的抗体がworkするか否かは非常に重要なポイントであり、現時点で重要なツールは入手できていると考えられる。また、今後の中心的な解析手法はLC-MS/MSによる網羅的解析であるが、学内の共同施設の実験機器担当者とのディスカッションも行なっており、解析に向けた準備が整いつつある。一方で、bhb-Kによるヒストン修飾は複数箇所が同定されており、特異的抗体も入手可能である。それらの特異的抗体を網羅するような検討が今後は必要である。また、ケトン体を上昇させるには飢餓刺激のみでなく、ケトジェニック食負荷による方法や、ケトン体の上昇効果が報告されているSGLT2阻害薬投与などの手段も存在するため、病態生理の観点からそれら各種刺激によるケトン体上昇効果の評価、bhb-K増加の確認、さらに臓器におけるbhb-Kの特異性の検証などを行なっていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
血中ケトン体上昇時において、bhb-Kの増加が今回確認した肝臓以外のどの臓器に特異的に認められるかを検討する。具体的には、飢餓刺激時の各臓器での増加をウェスタンブロットで評価する。さらに、ケトン体上昇効果が認められる他の刺激(ケトジェニック食、SGLT2阻害薬投与)を行なって、血中BOHB上昇の有無、各臓器におけるbhb-K増加の程度を検討する。これらの臓器において、抗bhb-K抗体を用いた免疫沈降、およびLC-MS/MSによる網羅的解析を実施し、bhb-Kがenrichされるタンパクを同定し、機能解析を行う。さらに、ヒストン特異的bhb-Kに対する抗体を用いてクロマチン免疫沈降を行い、同時にRNAシークエンスによる発現解析を実施してそれらの結果も合わせて解析することにより、bhb-Kによる転写制御に関しても網羅的解析を試みる。一方で、bhb-Kによる具体的な転写制御機構に関しては未解明である。これまでのChIPシークエンス解析により、エピジェネティック制御機構の一端が示唆されてはいるが、in vitroでの検討はほとんど行われていない。今後は、in vivoの実験系と並行して転写制御に関するp53を用いたin vitroの転写系の検討を行う。
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