2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒストンを中心としたタンパク質新規アシル化の制御機構と生理的意義の解明
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17K08669
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西田 友哉 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10581449)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | βヒドロキシ酪酸化 / アシル化 / アセチル化 / ケトン食 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の検討において、新規アシル化としてリシン残基のβヒドロキシ酪酸化(bhb-K)に注目し、その特異的抗体を入手して検証を行った。近年、ケトン食やその摂取に伴うケトン体上昇の健康への影響が注目されているが、ケトン食負荷によって血中βヒドロキシ酪酸(βOHB)が増加した際に、hbh-Kがどのように変化するかを検討した。 ケトン食負荷の方法として、常時ケトン食とする方法や、体重増加を回避するために通常食と交互に一週ごとに投与する間欠的ケトン食負荷といった方法が行われている。(1)常時通常食負荷(2)常時ケトン食負荷(3)間欠的ケトン食負荷の3群において、血中βOHBの濃度の変化、ならびに様々な臓器でのタンパクのbhb-K化について、ウェスタンブロットにより解析を行った。その結果、常時ケトン食負荷では血中のケトン体増加が認められる一方で、間欠的負荷でもケトン食負荷直後には同様の増加が見られた。その後、経時的に肝臓を中心として複数の臓器で(1)アセチル化(2)bhb-K化について検討した。(1)アセチル化は血中βOHBの増加に伴って広範なタンパクに顕著な増加が認められた一方で、(2)bhb-K化については、その増加が認められるタンパクは部分的であると考えられた。さらに、間欠的ケトン食負荷においては、ケトン食負荷直後においては常時ケトン食負荷と同様の血中βOHB増加が認められる一方で、通常食負荷直後ではその上昇は見られなかった。また、アセチル化およびbhb化に代表されるアシル化に関しても、間欠的負荷における通常食負荷直後においては、常時通常食負荷と比較して明らかな変化は認められなかった。以上から、βOHB増加を介したbhb-K化については、そのある程度恒常的な血中濃度上昇が必要である一方で、その他の生理的な条件によっても、修飾を受ける部位に相違があることが想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の検討において、飢餓刺激のみならず、ケトン食負荷に伴ってアセチル化やβOHB化などのアシル化がどのように変化するか、また臓器や時間経過による相違についても幅広く検討を行うことができた。 一方で、それらの修飾を網羅的に解析するためには、特異抗体を用いた免疫沈降法による質量分析が必須であるが、その基礎検討が予定通り進んでいない。本年度は本学研究棟の大規模な移転の時期と重なり、それらの実験の実施が困難であった点が大きい。 また、ケトン食負荷における検討では、アセチル化とは異なり、bhb-K化が均一に増加しているわけではなく、飢餓刺激でのケトン体増加に伴うbhb-K化の増加とは異なる制御機構の存在が想定される。この新しいメカニズムの解析に関しても興味を持って実験を進めており、本来予定されていた網羅的解析を中心とする研究計画から遅延する一因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は質量分析による網羅的解析に進むため、まずその基礎検討を行う。具体的には、マウス肝臓のライセートとアセチル化リシンに対する抗体を用いて免疫沈降を行い、LC-MS/MSによってアセチル化ペプチドを網羅的に同定し、既知のデーターベースと比較することで実験系が確立されているかどうか、特に質量分析計の性能が担保されているかどうかを検証する。 同様の実験はbhb-K化についても行い、抗hbh-K抗体の有用性を検討する。 一方で、血中ケトン体濃度の増加が認められる条件によってbhb-K化の様相が異なることが明らかとなっている。そのため、(1)飢餓条件下(2)浸透圧ポンプによる持続的なケトン体投与(3)ケトン食負荷 のそれぞれの条件において、再度ウェスタンブロットによってbhb-K化の状態を確認したのち、上記の基礎的検討を経た免疫沈降法による網羅的質量分析により、hbh-K化されたタンパクやその修飾部位を同定する。 最終的に同定されたタンパクに関して遺伝子オントロジー解析を実施し、そのような生理的パスウェイが関与しているのかどうかを明らかにする。
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