2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08673
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山口 賢 日本大学, 医学部, 助教 (70451614)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インスリン分泌 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究背景として、RMCE法を応用し、薬剤誘導的に目的遺伝子を過剰発現またはノックダウンできるシステムを構築した。新規インスリン分泌調節蛋白として同定したCITED4を、MIN6細胞に過剰発現させると、高グルコース刺激下でのインスリン分泌の亢進を認めた。CITED4の過剰発現により、HIF-1α下流の遺伝子であるGlut1が約50%に減少し、Ldhaが約20%に減少していた。 そこで、RMCE法でLdhaをノックダウンする細胞株を作製した。薬剤誘導性にLDHAのshRNAを発現させると、高グルコース刺激下でのインスリン分泌が亢進した。CITED4はHIF-1αを抑制し、好気性代謝へのシグナルを亢進させ、インスリン分泌を制御する事が示唆される。それには、LDHAが重要な働きを有することが示唆された。 MIN6細胞株を低酸素下で培養し、HIF-1αの発現を亢進させると、高グルコース刺激でのインスリン分泌が優位に抑制された。あらかじめ、LDHAをノックダウンする事で、低酸素下でのインスリン分泌が回復した。この実験結果の確証のため、塩化コバルトを用いて、疑似的な低酸素状況でのインスリン分泌実験を行った。低酸素下と同様に、塩化コバルト下では、高グルコース刺激でのインスリン分泌の低下、LDHAの発現抑制によるインスリン分泌の回復を認めた。また、低酸素やLDHAを抑制した状況は、インスリン分泌のみならず、細胞増殖あるいは細胞死に影響を及ぼす事がわかった。 上記の実験に加え、マイクロ解析から導き出した数種類の遺伝子について、RMCE法にて、過剰発現、発現抑制できる細胞株を樹立し、その中の数種の遺伝子がインスリン分泌に影響を及ぼす事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CITED4-HIF-1α-LDHAの経路が、インスリン分泌に重要である事がわかった。また、この経路は、低酸素下でのインスリン分泌や細胞増殖または細胞死に関わってくると考えられた。 生体では、環境因子や疾病などにより、一過性、あるいは慢性的に低酸素状態が生じる。低酸素ストレス下で中心的な役割を果たす転写因子がHIFである。HIFは、単純な低酸素応答のみならず、個体形成、がん、虚血性疾患、造血幹細胞の維持機構など、様々な疾病と関連している事が報告されている。膵β細胞においても、生体で低酸素状態が生じ、HIF-1αが活性化される事が報告されている。CITED4については、これまで報告が少なく、この蛋白の機能解析を行う事は、膵β細胞機能を解析する上で重要と考えられる。 本年、CITED4に加え、RMCE法を用い、数種類の蛋白について、過剰発現する細胞株、ノックダウンする細胞株を作成した。これにより、インスリン分泌に影響を及ぼす遺伝子を数種類同定した。 これらの研究成果は、来年以降の研究の発展につながるもので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞が低酸素にさらされると、HIF-1αの発現が亢進し、糖輸送や解糖系の酵素が誘導され、低酸素状態での生存に有利な状況を作る。HIF-1αが膵β細胞機能について重要な役割を担うとの報告は散見されるが、インスリン分泌を亢進させるか、あるいは、低下させるかは、見解の一致が得られていない。低酸素下でのインスリン分泌応答や細胞増殖能について、詳細な検討を行う。まず、遺伝子の発現について、網羅的な解析を行う。コントロールのMIN6細胞、低酸素下で培養したMIN6細胞、RMCE法でLDHAをノックダウンして低酸素下で培養したMIN6細胞、これらの3群のマイクロアレイ解析を行う。3群間の遺伝子の発現の発現を比較する事で、インスリン分泌や細胞増殖に重要な遺伝子の抽出を目指す。抽出された遺伝子について、ウェスタンブロットによる蛋白発現の検討や、場合によっては、過剰発現株やノックダウンさ細胞株を作製し、機能解析を行う。また、野生型マウスから膵島を単離し、高グルコースや低グルコースで培養した際や、低酸素での遺伝子の発現について検討を加える。 新たにインスリン分泌調節蛋白として同定した遺伝子についても、機能解析を行っていく。
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Research Products
(1 results)