2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08673
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山口 賢 日本大学, 医学部, 助教 (70451614)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 小胞体ストレス / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、マウス膵β細胞株・MIN6細胞のマイクロアレイ解析により、新規ストレス応答蛋白として、時計遺伝子であるChrno遺伝子を見出した。Chrno遺伝子は、2014年に、最後の時計遺伝子として、国内外の2つの研究グループにより、同時に報告された時計遺伝子である。 MIN6細胞やマウスの単離膵島において、低酸素刺激や薬剤性(ツニカマイシン及びタプシガルギン)の小胞体ストレス刺激で、Chrono遺伝子の有意なmRNAの上昇を認めた。ウェスタンブロット法でも同様に、小胞体ストレス刺激によるChrno遺伝子の蛋白量の増加が確認された。マウスChrono遺伝子のプロモーター解析を行った。小胞体ストレスで活性される3経路の一つであるPERK経路で誘導される転写因子・ATF4の結合部位(C/EBP-ATF composite element)が、イントロン1に存在した。そこで、ATF4欠損MEF細胞を用いて、小胞体ストレス刺激でのChrono遺伝子の発現について検討を行った。ATF4欠損MEF細胞では、野生型MEF細胞と比較し、小胞体外ストレスで誘導されるChrono遺伝子の発現は、有意に抑制された。 本研究で、Chrono遺伝子が小胞体ストレス応答蛋白であり、PERK経路によって発現が誘導される事が明らかとなった。Chrono遺伝子は、コア時計遺伝子を抑制する機能を有する事が報告されている。Chrono遺伝子が、ストレス下において、時計遺伝子の発現を調節することにより、細胞障害に重要な機能を有している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2型糖尿病患者における膵β細胞の機能異常及び細胞量の減少の原因として、小胞体ストレスや酸化ストレスなどの細胞内のストレスが関与している。その一因として、時計遺伝子の乱れによる細胞内ストレス応答の異常が想定されている。しかしながら、膵β細胞における各時計遺伝子の具体的な機能はほとんど明らかになっていない。また、このようなストレス下における時計遺伝子の機能を解明する事は、糖尿病のみならず、様々な疾患の病態解明にも重要である。 本研究成果で、Chrono遺伝子が小胞体ストレス応答である事が明らかとなった。本研究は、膵β細胞障害における時計遺伝子の役割を解明する上で有意義と考えられる。生体での機能解析については、ノックアウトマウスを用いて今後実験を行う。 本研究成果は、来年以降の研究の発展につながるもので、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
膵β細胞におけるChrono遺伝子の機能解析、膵β細胞障害における時計遺伝子の機能解明を目的として実験を行う。 生体でのChrno遺伝子の解析を行うため、理化学研究所より既に譲渡されたChrono遺伝子欠損マウスを用いる。まず、Chrono遺伝子欠損マウスの耐糖能を評価するために、糖負荷試験やインスリン負荷試験を行う。これにより、インスリン分泌やインスリン抵抗性について評価を行う。さらにマウスから膵島を単離し、インスリン分泌機能やストレス応答性について検討を行う。これに加え、膵β細胞にストレスを負荷させるために、高脂肪食を負荷させた場合の耐糖能について検討を行う。 MIN6細胞での解析を行う。RNAi法によって、Chrono遺伝子をノックダウンし、生存能やインスリン分泌に対しての影響を調べる。また、過剰発現株についても、RMCE法を用いた細胞株の樹立を行う。これらの細胞を用いてインスリン分泌関連遺伝子の発現や生存能に関わる遺伝子、その他の時計遺伝子の発現について検討を行う。
|
Research Products
(1 results)