2017 Fiscal Year Research-status Report
DNA複製とストレス応答におけるHERC2の機能解析
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17K08676
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
呉 文文 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 講師 (10434408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HERC2 / BLM / RPA2 / DNA複製ストレス応答 / MCM |
Outline of Annual Research Achievements |
HERC2とMCMおよびBLMとの相互作用の解析を行った。1)Thymidine-nocodazole block細胞同調法にて、細胞周期におけるHERC2とMCM及びBLM複合体の結合を免疫沈降にて解析した。HERC2とMCM及びBLM複合体は細胞周期依存的に形成された。分裂期およびG1期ではHERC2とMCM及びBLMを結合しなかった。合成期でMCM及びBLMとRPAの複合体形成はHERC2依存的だった。HERC2とMCM及びBLMとの相互作用はDNA複製に関与するのを示唆された結果であった。2)上記細胞分画解析では、HERC2とMCM及びBLMの複合体が主に可溶化核分画に局在し、クロマチン分画から検出されなかった。これらの複合体はDNA複製に必要なRPA分子を複製DNA領域上に引き渡す役割を果たしているような結果であった。3)HERC2がBLMのストレス応答機能に極めて重要な分子であることが明らかになった。MMC、HUで複製ストレスを加えた際、HERC2分子がBLM複合体を安定化させる機能を果たしていた。HERC2の非存在下では、BLM複合体が安定形成できず、RPA分子とも結合しなかったため、細胞のストレス応答に障害が来した。 複合体形成様式の解析について、MCM複合体、BLM複合体、RPA複合体、BRCA1のそれぞれの構成因子をsiRNAにて発現抑制し、他の構成因子の結合状況を免疫沈降にて解析した。RPA複合体が他の複合体との結合はHERC2依存的だった。HERC2のC末端を介在して複合体間の結合が起き、その機能を果たしていた。 ストレス応答時、HERC2欠失やまたはそのE3活性の失活でBLM-RPA複合体およびMCM-RPA複合体は核可溶分画からクロマチン分画に移動できず、BLM機能障害が生じていたのも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画に沿って研究を実施した。HERC2とMCMおよびBLMとの相互作用の解析とこれらの複合体の結合様式の解析はほぼ完了した。ストレス応答時、BLM-RPA複合体とMCM-RPA 複合体が細胞分画間の移動状況も解析した。BLM-RPA複合体とMCM-RPAの形成はHERC2分子に依存し、細胞周期制御やストレス応答に機能していることを明らかにした。これらの結果から来年度はほぼ予定通りに研究計画が展開できると予想する。BLMのグアニン四重鎖の制御機能にHERC2が関わっていることが明らかになったため、その分子機構についてさらなる解析が今後の研究展開になるとも考え、予定していたImportinにおけるHERC2の役割の解析を一旦停止し、BLMのグアニン四重鎖の制御の分子機構解明に研究計画に付け加えた。
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Strategy for Future Research Activity |
HERC2の欠失やE3活性の失活によって、グアニン四重鎖の蓄積が顕著に増加した。BLMの分子機能から考えれば、BLM機能不全の表現型とも考えられる所見で、HERC2とMCMおよびBLMの分子間相互作用はグアニン四重鎖の制御に重要な分子機構であろう。グアニン四重鎖制御の分子機構において、HERC2分子の役割やまたはその制御に関わる一連の分子群との協働を捕捉して解析する必要がある。具体的には、グアニンリッチ配列を導入した人工合成DNAを利用して、shHERC2 細胞ないしΔE3/ΔE3細胞の溶解液を用いて、HERC2がグアニン四重鎖の形成もしくは解除に関わる直接てきな証拠を捉えながら、他の関連タンパク分子の協働を詳細に解析することで、グアニン四重鎖の分子機構の全容を明らかする。G4特異的抗体(BG4抗体)による細胞内G4を可視化し、種々の条件下でG4の蓄積に協働する一連の分子群の局在変化を解析することにより、グアニン四重鎖制御の分子機構を明らかにする。 shHERC細胞、ΔE3/ΔE3細胞、またはがん由来変異導入細胞を用いて、放射線によるDNA2本鎖切断、PARP 阻害剤、DNA 架橋剤、複製阻害剤およびG4 安定化剤に対する感受性をClonogenic survival アッセイにて解析する。G4 安定化剤は異なったG4 構造を認識する代表的なG4 安定化剤、BRACO1、Phen-DC3、TMPyP4、Pyridostatin およびTelomestatin を用いる。 BLM機能不全のもう一つよく知られている表現型は高頻度の姉妹染色分体交換である。HERC2とMCM及びBLM複合体と協働するタンパク分子群を明らかにしてから、それらの分子との協働によって、姉妹染色分体交換の状態を検討し、HERC2とMCM及びBLM複合体形成がBLM機能への影響およびその分子機構の全容を明らかにする。
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