2017 Fiscal Year Research-status Report
癌微小環境における細胞内シグナル制御因子O-GlcNAc糖鎖修飾の癌増殖への影響
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17K08678
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
森脇 一将 大阪医科大学, 医学部, 助教 (00467656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝日 通雄 大阪医科大学, 医学部, 教授 (10397614)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | p38 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
グルコース代謝物を基質とするO-GlcNAc修飾は、癌細胞内で異常に上昇して癌の成長を促進することが分かっているが、癌微小環境におけるO-GlcNAc修飾の機能は知見に乏しい。本研究では、全身でO-GlcNAc修飾が亢進するOgtトランスジェニック(Ogt-Tg)マウスに癌細胞の移植を行い、癌微小環境におけるO-GlcNAc修飾の機能を解析している。 B16メラノーマを皮下移植すると、野生型マウスと比べてOgt-Tgマウスでは移植癌細胞の増殖が速い。今年度は、その原因の1つを明らかにした。B16メラノーマ移植12日後に形成された腫瘍組織を解析したところ、野生型マウスと比べて、Ogt-Tgマウスではp38のリン酸化(pT180/pY182)レベルが有意に低かった。p38阻害剤の存在下、B16メラノーマ細胞を培養すると、ERK1/2とAktの活性上昇を伴って細胞増殖が亢進し、それは、ERK1/2とAktに対するp38の負のフィードバックが抑制された結果と考えられた。また、Ogt-Tgマウスでは、炎症性サイトカインの産生量が有意に低かった。そこで、腫瘍組織浸潤マクロファージのサブタイプを解析したところ、両群において抗腫瘍効果を持つM1型マクロファージが大部分を占めることが分かり、野生型マウスに比べてOgt-Tgマウス由来の腫瘍組織浸潤マクロファージでは、炎症性サイトカインの産生時に働くNF-κBの活性状態が低いことが分かった。以上から、癌細胞移植初期では、癌微小環境におけるO-GlcNAc修飾の亢進は、腫瘍組織浸潤マクロファージにおけるNF-κBの活性低下を来たして炎症性サイトカイン産生を低下させる結果、腫瘍細胞では、炎症性サイトカイン刺激の減少に伴いp38の活性が低下し、細胞増殖シグナルが活性化して腫瘍の成長が促進されていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の実施目標に挙げていた、癌微小環境におけるO-GlcNAc修飾の亢進が及ぼす(A)癌組織内シグナル変化と癌細胞の挙動、および、(B)癌微小環境の変化、について、その1つ経路を同定することが出来たので、おおむね予定通りに解析を進めることができたと判断している。ただ、野生型マウスと比べてOgt-Tgマウスでは移植癌細胞の増殖が速い理由の1つとして、腫瘍組織浸潤M1型マクロファージにおける炎症性サイトカインの産生能低下の関与を明らかにしたが、その他サイトカイン・増殖因子や他の免疫細胞などの関与の有無については明らかにできていないので、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
癌微小環境におけるO-GlcNAc修飾の亢進が腫瘍の成長を促進する理由について、腫瘍組織浸潤M1型マクロファージにおける炎症性サイトカインの産生能低下以外に存在するのか、他の癌微小環境について、引き続き解析を行う。腫瘍組織を用いたFACS解析や免疫組織染色によって、腫瘍組織浸潤細胞のプロファイリングを行い、また、種々のサイトカインや増殖因子など液性因子の発現をreal-time PCR解析を行うことで、野生型マウスとOgt-Tgマウス間での相違を見出していく。また、O-GlcNAc修飾の標的分子を同定する。Ogt-Tgマウスでは、腫瘍組織浸潤M1型マクロファージにおいてNF-κBの核移行が減少し、これが炎症性サイトカイン産生量低下の原因の1つになっている。まずは、NF-κB について、M1型マクロファージにおいてO-GlcNAc修飾を受けてその活性は低下するのか、明らかにする。さらに、抗O-GlcNAc抗体による免疫沈降を用いた生体・細胞試料の質量分析により、Ogt-Tgマウスでの癌微小環境において、野生型マウスと比べてO-GlcNAc修飾が亢進する分子の同定を試み、その標的分子のO-GlcNAc修飾レベルが腫瘍の成長に与える影響を解析する。
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Causes of Carryover |
全体としておおよそ予定通りに研究が進んでいるが、本年度に明らかにした点を中心に解析を進めたため、当初予定してた解析が部分的に遅れている。そのため、その解析に使用する予定であった抗体等の試薬をすべて購入できていないため、また、本年度は、学会への旅費に他の予算を充てたため、次年度への使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)