2018 Fiscal Year Research-status Report
Post-GWAS analysis of endometriosis: exploration of transcriptional regulation through chromatin interaction
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17K08688
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
中岡 博史 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 助教 (70611193)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / 体細胞変異 / KRAS / PIK3CA / ARID1A / 正常子宮内膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜は深部の基底層と子宮腔に近い機能層に分かれる。機能層は卵巣ホルモンの影響を受けて、増殖・脱落という周期的変化を繰り返す。子宮内膜機能層は月経周期に応じて剥落・増殖を繰り返す、高い再生能を有する組織であり、内膜腺上皮と呼ばれる一層の円柱上皮細胞および腺上皮を支持する間質細胞から構成される。我々は子宮内膜関連疾患の発症機序を考える上で、起源となる内膜機能層腺上皮細胞のゲノム特性を明らかにすることが重要であると考えた。また、腺上皮細胞は管状構造を呈して発達していることに着目し、腺上皮細胞を管単位で分離する実験手法を確立し、単一腺管レベルという最小機能単位でDNAシーケンスを行った。 結果として、子宮内膜から採取した腺管において、PIK3CAやKRASを含むがん遺伝子に体細胞変異が多数検出された。驚くべきことに、各腺管で保有する変異はクローナルな状態に達していたが、腺管ごとに異なる体細胞変異を保有していた。その結果、腺管の集合体である内膜組織はゲノムがモザイク状態を呈していた。さらに、子宮内膜症病変の上皮細胞において、同様の癌関連遺伝子に体細胞変異が認められた。特にKRAS変異における変異頻度が顕著に増加していた。これは、モザイク状ゲノムを呈する子宮内膜が月経血逆流を介して卵巣に生着・増殖する過程で、KRAS変異を有する腺上皮細胞が生存に有利となり、クローナルに増殖した結果、子宮内膜症発症に繋がったことを示唆している(Suda & Nakaoka et al. Cell Reports 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究によって、正常子宮内膜組織において、PIK3CAやKRASといった、がん関連遺伝子に体細胞変異が存在することを世界で初めて発見することができた(Suda & Nakaoka et al. Cell Reports, 2018)。我々が確立した腺上皮細胞を管単位で分離する実験手法は、単一腺管レベルという最小機能単位でゲノムシーケンスを実施可能にし、今後様々な展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はこれまでの研究によって、正常子宮内膜組織において、PIK3CAやKRASといった、癌関連遺伝子に体細胞変異が存在することを示したが、ヒト正常子宮内膜に蓄積している癌関連遺伝子変異の機能的影響は未解明である。子宮内膜は月経周期に応じて増殖・脱落を繰り返す組織であるため、癌関連遺伝子変異を有する細胞が組織再生、つまり、組織機能維持に有利に作用する可能性が考えられる。また、子宮内膜に癌関連遺伝子変異を蓄積していても、大部分の女性は生涯を通じて婦人科癌に罹患しない。このことは、子宮内膜を含む正常組織は、癌関連遺伝子変異が生じている細胞の存在をある程度許容・利用しつつ、恒常性を維持し、破綻を防ぐための制御機構を備えているのではないかと考えられる。そこで、癌関連遺伝子変異を保有する正常子宮内膜上皮細胞の分子表現型特性を明らかにしたい。さらに、癌関連遺伝子に変異が存在下において、生体恒常性を維持するために必要な分子特性を探索するために、正常子宮内膜上皮細胞において、RNA-sequencingによる網羅的遺伝子発現解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度に論文化を進めていたため、実験よりもデータ解析が中心になっていた。そのために、消耗品費の利用が予定よりも少なくなってしまった。繰り越し額を、次年度に、正常子宮内膜上皮細胞におけるRNA-sequencingによる網羅的遺伝子発現解析を行うためにて利用したい。
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