2017 Fiscal Year Research-status Report
早期乳癌の検診過剰診断抑制および複合免疫非侵襲的治療へ向けた臨床病理学的基盤研究
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17K08707
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
山口 倫 久留米大学, 医学部, 准教授 (10309750)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乳癌検診 / 過剰診断 / 非浸潤癌 / サブタイプ / 石灰化カテゴリー |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、乳癌において①検診領域では非浸潤癌を含めた早期乳癌の過剰診断・過剰治療が問題となり、②進行癌治療領域では癌微小環境における免疫応答の臨床的応用 (免疫療法) がトピックとなっている。 ①に対して、非浸潤癌の生物学的特性を示すサブタイプと過剰診断が問題になっている乳癌検診における石灰化カテゴリーについての研究を行った。(方法と対象) 2011-16年にJCHO久留米総合病院で主に石灰化を指標に施行されたステレオガイド下VAB生検471例を対象に非浸潤癌をVan Nuys Classificationを用い、病理学的石灰化とサブタイプとの関連性を検討した。(結果) 低異型度非浸潤癌は、22/23例が分泌型石灰化を有し、中等度非浸潤癌は、12/28例が壊死型石灰化、20/28例が壊死型と分泌型石灰化の混在を認めた。高度非浸潤癌は、12/22例が壊死型石灰化、7/22例が壊死型と分泌型石灰化の混在を認めた。癌とサブタイプは、 低異型度非浸潤癌は22/23がluminal、中等度非浸潤癌は、11/28例がluminal, 3/28例がHER2、高度非浸潤癌は、11/22がluminal, 9/22がHER2、1/22例がトリプルネガティブ (TN)であった。石灰化カテゴリー (C) は、C3は中等度非浸潤癌以上が28/430例 (7%)であったが、C4, 5以上の中等度非浸潤癌以上はそれぞれ25/80 (31%)、2/6 (33%) と上昇した。サブタイプ別ではC3はLumnalが46/430例に対し、HER2が4/430例でluminalが有意に高頻度であった。一方、C4, 5はHER2とTNが10/80例 (14%)、1/6例 (16%) であり、HER2とTNの頻度が上昇した。(結論) 石灰化を対象とする検診ではTN浸潤癌の前駆病変と考えるTN非浸潤癌はほぼ見つからない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
②進行癌治療領域では癌微小環境における免疫応答の臨床的応用 (免疫療法) がトピックとなっている。②に関して現在我々はまずHER2乳癌の臨床病理学的研究を開始した。【背景】HER2陽性乳癌におけるサブグループの差異について、病理学的見地による報告は少ない。我々は臨床病理学的にHER2陽性乳癌のサブグループと腫瘍形態との関連について検討した。 【対象と方法】対象は2013年1月から2016年12月までの浸潤性乳癌1301例中、HER2陽性乳癌218例 (HER2陽性率16.8%)から術前化学療法施行例を除いた169例をホルモン受容体陽性 (LH) と陰性 (NLH)に分け、LH群をさらに高発現群 (LH-high)と低発現群 (LH-low)に亜分類した。評価項目は、comedo壊死、乳管内病変、好酸性、Healing、Fibrotic focus (FF)、Tertiary lymphoid structures (TLS)、infarction、acellular、Tumor-infiltrating lymphocytes (TIL)、Histological grading (HG)、組織型、肉眼型、乳管内病変、comedo壊死 【結果とまとめ】LH-low群とNLH群は有意にhealingやTILが高く、comedo壊死と乳管内病変が多い特徴を示した。一方、LH-high群は有意に中心線維化を有し、HER2陽性乳癌は臨床病理学的、腫瘍形態的に少なくとも2群に大別されることが明らかとなった。NLHではTIL, healingが高く、乳管主体の癌が多い特徴を示すことが明らかになった(USCAP 2018)。今後の免疫療法を加えた治療方針選択の上でもその差異を考慮すべき可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
HER2陽性乳癌をホルモン受容体陽性 (LH) と陰性 (NLH)に分け、LH群をさらに高発現群 (LH-high)と低発現群 (LH-low)に亜分類し、今後も研究を継続、推進する。これまで得られた研究結果から、 ①LH-low群とNLH群は有意にhealingやTILが高く、comedo壊死と乳管内病変が多い特徴を示す。LH-high群は有意に中心線維化を有し、HER2陽性乳癌は臨床病理学的、腫瘍形態的に少なくとも2群に大別されることが明らかとなったことから、マンモグラフィ、画像との関連性の検討を推進する ②NLHではTIL, healingが高く、乳管主体の癌が多い特徴を示すことが明らかになったことから、免疫チェックポイント阻害剤を使用した臨床応用に関連する可能性がある。今後、PD-L1やリンパ球のサブセット (CD3, CD4, CD8, CD20, CD56, Foxp3, TIA-1) とNLHのみならず他のサブタイプ、TILとの関連を明らかにする。
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Causes of Carryover |
初年度に計画していた研究がデータベースを作成することにより、当初計画していた支出額よりも低くなり、次年度使用額が生じました。本年度は物品費などを主に購入させていただき、使用させていただく予定です。
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Research Products
(12 results)