2017 Fiscal Year Research-status Report
MCPyV感染実験系樹立とMCPyV陽性メルケル細胞癌の発癌機序に基づく治療
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17K08720
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
林 一彦 鳥取大学, 医学部, 教授 (30180962)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メルケル細胞癌 / ポリオーマウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
皮膚のメルケル細胞癌(MCC)の多くがポリオーマウイルス(MCPyV)関連神経内分泌癌であると近年判明している。MCCの予後不良に関与する分子生物学的異常については十分解明されていない。SWI/SNF複合体はクロマチン構造の改変に関わる蛋白群で、癌抑制因子としての機能を持ち、その異常が多くの腫瘍の発生や進展に関わることが知られている。我々はMCCにおけるSWI/SNF複合体構成蛋白の発現異常と、それらが予後を含めた臨床病理学的因子に及ぼす影響を検討した。MCCの50例(MCPyV陽性30例,陰性20例)に対しBRG1, BRM, INI1, ARID1Aの免疫染色を施行し、発現の消失・減弱と臨床病理学的因子との比較を行った。BRG1, BRM, INI1, ARID1Aの消失・減弱はそれぞれ5例(10%), 2例(4%),0例,0例で見られた。BRG1の消失・減弱例とそれ以外との間で年齢、性別、病期、MCPyVの有無、予後を比較したが有意な差は認めなかった。MCCにおけるSWI/SNF発現異常の寄与は少ないと考えられる。 Long non-coding RNAのNEAT1(Nuclear Enriched Abundant Transcript 1)はparaspeckle形成に必須の因子で、ウイルス感染時に発現されて種々のcytokineを誘導することが知られている。MCC27例の解析でも、MCPyV陽性MCCはMCPyV陰性MCCより有意にNEAT1発現が高く、paraspeckle(SFPQ)も約2倍になっていた。MCPyV陽性MCCとSFPQ-ChlP seq dataで1.5倍以上増加した遺伝子から15種類のNEAT1関連遺伝子を同定した。その中の一つの接着因子関連遺伝子GNB1L2の蛋白発現がMCPyV陽性MCCで有意に高いことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これから発表の準備中の研究で面白い結果が出つつある。 1.メルケル細胞癌(MCC)のMCPyVの有無で、腫瘍細胞の形態やシグナル伝達遺伝子変異や発現の差異がある。遺伝子発現やクロマチン状態は、ヒストン修飾を始めとしたエピジェネティックな制御を受けるが、今回、MCCにおける、転写抑制性のヒストン修飾であるH3K27me3の有無とMCPyV感染や予後との相関を検討した。MCC 42例 (MCPyV陽性20例/ 陰性22例[扁平上皮癌合併17例])を用い、H3K27me3の免疫染色を行った結果、H3K27me3修飾はMCPyV陽性例に比べ陰性例は有意に低下し(p=0.001)、特に合併扁平上皮癌のない陰性例に比して合併陰性例で、有意に低下(p=0.002)していた。H3K27me3の修飾と予後に関連性は認めなかった。MCPyVの有無でH3K27me3の修飾状態が異なることを明らかにした。 2.Indoleamine 2,3-dioxygenase-1 (IDO1) はトリプトファンをキヌレニン経路へ代謝する律速酵素である.IDO1 活性の結果として局所トリプトファンの枯渇あるいは細胞毒性を有するトリプトファン代謝産物増加により T 細胞や NK 細胞の機能を制御し,腫瘍,ウイルス感染症等で IDO1 が免疫制御因子としての重要である。MCCのウイルス陽性群と陰性群では、腫瘍細胞でのIDO1発現が異なり、予後とも関連することを明らかにしている。しかし、腫瘍微小環境における発現には有意差がなかった。IDO1発現が高いと予後不良であることを初めて明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.免疫調節因子のIDO1と同じトリプトファン代謝経路でのTDO2酵素、キヌレニン、これらの標的であるaryl hydrocarbon receptor(AhR)の発現とMCCにおける腫瘍と腫瘍微小環境における発現と腫瘍ウイルスや予後等の臨床病理学的因子との相関を明らかにしたい。 2.同時に免疫調節因子として有名なPD-1, PD-L1のMCCでの発現とウイルス感染や予後などの臨床病理学的因子との相関を検索する。 3.MCCの発癌機序としてDNAミスマッチ修復機構に関与する遺伝子産物のMLH1, MSH2, MSH4,PMS2の発現の有無とウイルス感染や予後などの臨床病理学的因子との相関を検索する。 4.MCPyV感染のin vitro実験系の樹立に向けて試行を行う。 5.今まで学会発表しているが論文掲載に至っていないデータをできるだけ英文原著として投稿して掲載につなげる。
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Causes of Carryover |
購入予定していた物品は、輸入手続き等で時間がかかりすぎて年度内に購入することが不可能と判明したためで、また、次年度に新しい大学院生が加わることが確定して、その学生の研究のために資金を用意する必要があったために次年度使用額が発生した。 新しい大学院生の研究課題について早めに予算を執行するように努める。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Epstein-Barr Virus Lytic Reactivation Activates B Cells Polyclonally and Induces Activation-Induced Cytidine Deaminase Expression: A Mechanism Underlying Autoimmunity and Its Contribution to Graves' Disease.2017
Author(s)
Nagata K, Kumata K, Nakayama Y, Satoh Y, Sugihara H, Hara S, Matsushita M, Kuwamoto S, Kato M, Murakami I, Hayashi K
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Journal Title
Viral Immunology
Volume: 30(3):
Pages: 240-249
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Association of Hedgehog signal expression with MCPyV infection and outcome in Merkel cell carcinoma.2017
Author(s)
Matsushita M, Kuromi T, Iwasaki T, Kuwamoto S, Nonaka D, Nagata K, Kato M, Kitamura Y, Hayashi K
Organizer
29th European Congress of Pathology, Amsterdam, Netherlands, 2017
Int'l Joint Research
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[Presentation] Altered expression of SWI/SNF complex and its significance in Merkel cell carcinoma.2017
Author(s)
Matsushita M, Kuwamoto S, Iwasaki T, Nonaka D, Nagata K, Kato M, Kitamura Y, Hayashi K
Organizer
29th European Congress of Pathology, Amsterdam, Netherlands, 2017
Int'l Joint Research
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