2018 Fiscal Year Research-status Report
MCPyV感染実験系樹立とMCPyV陽性メルケル細胞癌の発癌機序に基づく治療
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17K08720
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
林 一彦 鳥取大学, 医学部, 教授 (30180962)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メルケル細胞癌 / メルケル細胞ポリオーマウイルス / 腫瘍微小環境 / トリプトファン代謝経路 / NOTCHシグナル伝達経路 / ランゲルハンス組織球症 |
Outline of Annual Research Achievements |
メルケル細胞癌(MCC)とその腫瘍微小環境(TME)におけるTry代謝の律速酵素であるIDO1とTDO2及びTry代謝産物kynurenineのレセプターであるAhRの発現とMerkel cell polyomavirus(MCPyV)感染や予後との相関を検討した結果、1) MCPyV(-)MCCの腫瘍におけるIDO1とTMEにおけるTDO2の発現が有意に高く、2)腫瘍でのIDO1低発現とTMEでのTDO2とAhRの低発現のMCC群が有意に予後良好であった。MCCにおける腫瘍免疫低下を誘導するTry代謝経路の発現評価は、この経路を標的とする免疫療法が有効な患者を選択するのに重要である(Hum Pathol. 2019;84:52-61)。 組織の発生や恒常性維持に重要なNotch signaling系のNOTCH1/NOTCH2/NOTCH3/jagged 1 (JAG1) のMCCでの発現とMCPyV感染や予後との相関を検討した結果、1) MCPyV(-)MCC群はJAG1発現が有意に高く、NOTCH3も低発現傾向を示し、2)NOTCH3高発現MCC群は、有意に予後(OSとDSS)が良好であった。癌抑制遺伝子であるNOTCH3発現は、MCCの独立した予後因子である(Anticancer Res. 2019;39(1):319-329)。 Langerhans組織球症やLangerhans細胞肉腫について、MCPyV感染が interleukin-1 activation loop modelのトリガーとなり、遺伝子異常の背景を持つランゲルハンス細胞から発生する仮説を提唱した(Cell Commun Signal. 2018,22;16:49)。 感染性腫瘍疾患の一つの病理として「Merkel細胞癌とMerkel細胞ポリオーマウイルス」に関する総説を著した(病理と臨床2018.36:179-184)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メルケル細胞癌とその腫瘍微小環境におけるトリプトファン代謝経路の因子の発現とMCPyV感染状態や予後との間に相関があるとした報告は、とても高い関心を集めている。 メルケル細胞癌におけるNOTCHシグナル発現に関しても、NOTCH3発現が独立した予後因子であるとのたいへん有益な知見を報告できた。 メルケル細胞ポリオーマウイルス感染によるinterleukin-1 activation loop model誘導が、ランゲルハンス組織球症やランゲルハンス細胞肉腫の発生の引き金になる可能性があることを記したのもとてもユニークで興味深い。 しかし、「メルケル細胞ポリオーマウイルス陰性のメルケル細胞癌では、ヒストンH3K27me3修飾が低下する」ことを第107回日本病理学会総会、札幌、2018に報告したが、まだ、論文投稿に至っていない。 また、困難が予想されたメルケル細胞ポリオーマウイルスの分離とそのウイルスによるin vitroでの培養細胞を用いた実験的ウイルス感染系システムの構築が、いまだに成功していない。
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Strategy for Future Research Activity |
最後の年度になるので、これまでに学会発表をしただけで論文として掲載できていない成果について、できるだけ速やかに論文を投稿して掲載できるように努力する。 メルケル細胞癌におけるmismatch repair (MMR)に関与する遺伝子、MLH1, MSH2, MSH6, PMS2の発現とメルケル細胞ポリオーマウイルス感染や予後との相関を検索する。 腫瘍免疫に関与する重要な因子であるMHC class Iの発現とメルケル細胞ポリオーマウイルス感染や予後との相関を検索する。 現在、最新の免疫療法として脚光を浴びている免疫チェックポイント阻害療法がある。その基盤としてT細胞表面に発現する受容体の免疫反応を抑制するprogrammed dath 1(PD-1)と抗原提示細胞や腫瘍細胞上に発現するリガンドのprogrammed cell death ligand 1(PD-L1)のメルケル細胞癌と浸潤炎症細胞における発現状態とメルケル細胞ポリオーマウイルス感染や予後との相関を検索する。 メルケル細胞ポリオーマウイルス感染培養細胞系の樹立に、引き続き努力して取り組む。
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Causes of Carryover |
必要な物品費などは、H30年度内に使用期限がある教室研究費や受託研究費等を優先的に使いきることで確保できたため、翌年に予算を繰り越せる科学研究費は、H31年度に繰り越して、国内学会や国際学会での発表の必要経費や国際雑誌への投稿、論文掲載費、追加の必要な物品の購入代金として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Merkel cell polyomavirus and Langerhans cell neoplasm2018
Author(s)
Ichiro Murakami, J. Nakashima, M. Iguchi, Makoto Toi, Y. Hashida, T. Higuchi, M. Daibata, M. Matsushita, Takeshi Iwasaki, Satoshi Kuwamoto, Yasushi Horie, Keiko Nagata, Kazuhiko Hayashi, Takashi Oka, Tadashi Yoshino, Toshihiko Imamura, Akira Morimoto, Shinsaku Imashuku, Jean Gogusev, Francis Jaubert
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Journal Title
Cell Commun Signal.
Volume: 16
Pages: 49.
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] The histone modification H3K27me3 is reduced in MCPyV-negative Merkel cell carcinomas.2018
Author(s)
Matsushita M, Iwasaki T, Kuwamoto S, Lusi Oka Wardhani, Nonaka D, Nagata K, Kato M, Kitamura Y, Hayashi K.
Organizer
30th European Congress of Pathology, Bilbao, Spain, 2018
Int'l Joint Research
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[Presentation] The expressions of IDO1 and TDO2 in tumor cells and their tumor microenvironment are associated with MCPyV status and prognosis in Merkel Cell Carcinomas2018
Author(s)
Lusi Oka Wardhani, Matsushita M, Iwasaki T, Kuwamoto S, Nonaka D, Nagata K, Kato M, Kitamura Y, Hayashi K.
Organizer
30th European Congress of Pathology, Bilbao, Spain, 2018
Int'l Joint Research
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