2019 Fiscal Year Research-status Report
重症インフルエンザの立体電顕画像による微細形態の観察と病理学的・分子生物学的解析
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17K08733
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中島 典子 国立感染症研究所, 感染病理部, 室長 (60333358)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / インフルエンザウイルス肺炎 / びまん性肺胞傷害 / サイトカインストーム |
Outline of Annual Research Achievements |
2018/19シーズンならびに2019/2020シーズンの重症インフルエンザによる院外死亡例、計15例の病理学的解析を行った。全例A型でA/H1N1亜型(以下H1)が8例(男5例)、H3N2亜型(以下H3)が7例(男3例)であった。年齢の中央値はH1が66歳、H3が77歳であった。発症から死亡までの日数、抗ウイルス剤の使用、基礎疾患について亜型間で相違はなかったが、H1感染例では、H3感染例と比較して、肺末梢領域からもウイルスゲノムが検出されることが多かった。 2009年以降、集積されたインフルエンザ関連死亡剖検例は70例になるが、肺病理所見では、H1例において、急性呼吸促迫症候群(ARDS)の病理像であるびまん性肺胞傷害像がみられた頻度が44例中16例でH3やB型よりも高かった。 膠原病を基礎疾患に有したH1例では、季節性インフルエンザウイルスのレセプター(α2,6 シアル酸)の発現が低い肺胞上皮細胞においてもウイルス抗原が検出され、肺組織から回収されるH1のゲノム変異の解析が必要であると考えられた。局所におけるサイトカイン/ケモカイン、炎症マーカーなどの発現などの検討においては、血清IL-6が高値であった突然死例で、剖検肺組織において、IL-6が免疫組織化学で、血管内皮細胞、肺胞ならびに気管支上皮細胞、マクロファージで陽性であった。また、インフルエンザ関連突然死例で心臓の血管内皮細胞でHMGB-1の発現部位が核から細胞質へ移行しており、後期炎症性メディエーターのHMGB-1の発現が局所で亢進していたことを示唆する結果が得られた。これらはインフルエンザウイルス感染による宿主の免疫応答の結果であり、過剰な炎症反応(サイトカインストーム)による致死的病態を示唆していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主たる研究課題である、電子顕微鏡を用いた新しい解析法による重症インフルエンザの肺組織の解析については、インフルエンザの国際会議でポスター発表し、論文にまとめることができた点は大きな進捗であった。 重症インフルエンザの病理解析については、A型インフルエンザにおいて、A/H1N1亜型とA/H3N2亜型の剖検肺組織におけるウイルス分布の違いを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに集積されたインフルエンザ死亡例の肺組織の解析を型・亜型ごとにまとめて英文誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
重症インフルエンザ症例の解析・論文投稿に要する費用が必要となった。次年度使用額は論文校正、投稿掲載に関する費用に使用予定である。
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[Presentation] The marmoset as an animal model of influenza2019
Author(s)
Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, Noriko Nakajima, Maki Kiso, Kenta Takahashi, Mutsumi Ito, Takashi Inoue, Machiko Horiuchi, Norio Okahara, Erika Sasaki, Hideki Hasegawa, Yoshihiro Kawaoka
Organizer
10th Edition of Options for the Control of Influenza
Int'l Joint Research
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