2017 Fiscal Year Research-status Report
ジスルフィド結合を介したタイト結合機能調節:細胞増殖因子としての機能解明
Project/Area Number |
17K08735
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 敏 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (30374250)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タイト結合 / redox / ジスルフィド結合 / ユビキチン / thioredoxin |
Outline of Annual Research Achievements |
Occludin-FLAGの野生型およびシステイン変異型をAMOC2細胞に発現させて、様々な条件下でのoccludin-FLAGの安定性や、安定したジスルフィド結合の有無、ユビキチン化を介した分解や細胞増殖への影響を観察した。 Occludin-FLAG発現細胞を様々な濃度のH2O2へ曝露したが、野生型、システイン変異型いずれにおいても明らかなoccludin-FLAG量の変化は見られなかった。塩化コバルト処理によりHIF-1分解を阻害した状態では、occludinの野生型とシステイン変異型いずれでも発現量が減少し、野生型と変異型での差がなかった。 また、SH基修飾試薬を使った検討では、occludinに含まれる7か所のシステイン(Cys)のうち、細胞外ループにあるCys216とCys237にジスルフィド結合が存在する可能性が見られ、occludin分子内及び分子間のいずれの可能性も考えられた。それに対し、Cys74、Cys82、Cys148はSH基修飾試薬に反応性が見られず、ジスルフィド結合の有無については確定できなかった。Cys409、Cys500については、安定したジスルフィド結合を作っていないと推測された。 ユビキチンE3リガーゼITCH認識部位を変異させたoccludin-FLAGは培養細胞では低酸素でも安定性が保たれた。また野生型GFP-occludin発現細胞に比してITCH認識部位変異型GFP-occludin発現細胞は細胞増殖性が抑制された。免疫組織学的検討では低酸素状態でcleaved caspase-3発現が増強しており、アポトーシスを誘導することにより腫瘍増殖性を抑制することが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Occludinとジスルフィド結合、低酸素、H2O2曝露やユビキチン化に関する検討は進んでいるほか、新たにSH修飾試薬を利用したジスルフィド結合の解明を始めた。また、occludinと細胞増殖の関連も検討を始めている。それに関連して、occludinのジスルフィド結合やユビキチン化を介した細胞内シグナルについて検討している。しかし、occludinのジスルフィド結合の部位の決定がまだ十分でなく、そのジスルフィド結合を制御するthioredoxinの有無、相互作用に関する検討は進んでいない。以上を総合して、おおむね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
SH基修飾試薬を利用して様々な条件下でのoccludinのジスルフィド結合の変化を観察する。また、ユビキチン化と、細胞増殖性の関連を検討することにより、occludinの細胞内シグナル分子としての機能を解明する。そのために、cspase-3以外のアポトーシス関連分子や、細胞増殖関連分子の変化を検討する。またジスルフィド結合だけでなく、リン酸化や糖鎖修飾などについても検討する。これらのoccludin二次修飾と細胞内分布の変化を蛍光顕微鏡で観察する。また、ジスルフィド結合が少なくとも細胞外ループに存在することが分かったため、この部位に結合するthioredoxinを共免疫沈降、質量分析で特定することを目指す。また、occludinの変異がタイト結合機能、とくに細胞間隙物質透過性に影響するか検討する。他のタイト結合膜蛋白(tricellulin、MARVEL D3、JAM)についても同様の検討を行い、比較検討する。
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