2017 Fiscal Year Research-status Report
Integrative research on IPMN using organoids obtained from patients' pancreatic juice.
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17K08755
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
山口 武人 千葉県がんセンター(研究所), 消化器内科, 病院長 (00241969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 絵美里 千葉県がんセンター(研究所), 消化器内科, 医長 (20773980)
筆宝 義隆 千葉県がんセンター(研究所), 発がん制御研究部, 部長 (30359632)
丸 喜明 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (30742754)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オルガノイド / 3次元培養 / IPMN |
Outline of Annual Research Achievements |
膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN:intraductal papillary mucinous neoplasm)は膵前がん病変の一つである。遺伝子変異の解析等で最近研究の進展が見られたが、依然としてその病態や悪性化機構などにおいて不明な点が多い。また、細胞診や画像による診断の質にも改善が必要な状態である。本研究では経口膵管鏡の開発に関与した代表研究者と、正常オルガノイドのin vitro発がん系を開発した分担研究者の両者が、それぞれ高い優位性を有する技術を組み合わせることで、革新的なIPMN診断法を開発することを目的とする。具体的には、膵管鏡で採取した膵液由来オルガノイドに対する、細胞診との比較を含む詳細な解析や、遺伝子導入による発がん性の評価などを通じ、IPMN細胞の発がんリスク診断法の開発およびがん化メカニズムの解明を目指す。 初年度は膵管鏡で膵液中から採取した検体から10例についてオルガノイド培養に成功した。これは外科手術により切除されたIPMNおよび膵液から培養を試みた際には全例で不成功だったことと極めて対照的であり、膵管鏡で膵液を採取することに高い優位性があることが示唆される。得られたオルガノイドに対しては種々の病理学的解析を行ったが、軽度の異形を伴う管腔構造を呈した。また、Mucinの免疫染色により細胞診検体と同様の染色パターンを示すことを確認した。また、実際に得られたオルガノイドが真にIPMN由来であることを確認するために、頻度の高い変異であるKRASやGNASについて次世代シークエンサーによるパネル検査等を進めている。全例についてヌードマウス皮下へ移植したところ一部の症例が生着し、これらの症例についてはがん化したIPMNであると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IPMN患者の膵液は腫瘍が産生する粘液のために極めて粘性が高く、そのままでは培養開始が困難である。また、臨床検体のためコンタミネーションのリスクも高いため、迅速な取り扱いと細心の注意が必要である。こうした問題点に対して粘り強く対策を立て、幅広い検討を行うことで3次元培養が可能となった。IPMN細胞の培養はこれまで世界的に成功例がなく、我々の調べた範囲では全く論文報告がない。そのため本研究で10例の成功例が得られたことは極めて重要な成果であると考えられる。半数以上の症例で培養に成功しており、手技的にも、実験条件的にもほぼ安定して培養が行える状況が整いつつある。オルガノイドに対するMucinの免疫染色では、分化した粘液産生細胞がオルガノイドの一部に限局して分布する像が見られ、生体内と類似したホメオスタシスが培養細胞中に再現されている可能性が強く示唆された。従って、本疾患の病態を解明する上で有用なリソースとなると考えられる。また、頻度の高い変異であるKRASやGNASについて、膵液中よりもオルガノイドで変異頻度が顕著に上昇していることを見出していおり、変異を有するIPMN細胞に増殖優位性があるため、3次元培養で濃縮可能であることが明らかとなった。手術検体でなぜ培養が成功しないかについては推測の域を出ないが、培養を開始する時点で細胞の生存率が低い可能性があげられる。これは膵癌に関しても広く知られていることであり、膵由来消化酵素により自己融解を起こしやすいことが原因かもしれない。その意味においては、膵管内で、酵素が活性化しない状態で採取された細胞を用いた点が成功の理由になるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
IPMNは必ずしも症例数の多い疾患ではないため、現在得られた症例の解析を完了した段階での論文化を予定している。IPMNは前癌状態であることから、発がん機構の解明に資するリソースとして様々な展開が今後の方向性として考えられる。例えば、ヌードマウス皮下で腫瘍形成能を有さないオルガノイドに対して、IPMN では変異の頻度が低いPTENやp53をノックダウンすることでがん化が誘導されるかについて、容易に検証可能である。また、これまでIPMNの細胞株が皆無だったため、それを用いた治療標的の探索や診断マーカーの開発なども全く行われていない。こうした研究が非常に容易に行えるようになることが期待される。また、従来の細胞診におけるIPMNの悪性度の診断と比較して、オルガノイドとして濃縮してから診断を行った場合に、感度や正確性が増すかどうかの検証を行う必要がある。なお、IPMNのサブタイプとして胃型と腸型で悪性化のリスクが異なることがすでに明らかになっている。こうした分類はオルガノイドでもほぼ一致していることから、オルガノイドを用いた解析により、その分子基盤を解明することが可能になるかもしれない。また、臨床的には長期間の経過観察を行い、どのタイミングで手術を選択するかが問題となるが、ある種の化学予防により病気の進展を抑制するだけでなく、前癌状態の細胞を効率的に排除可能な介入が可能になる可能性がある。IPMNオルガノイドはこのように様々な研究に道を開くものであり、大きなブレークスルーが期待される。
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Causes of Carryover |
注文した消耗品が輸入品で、納期が年度を跨いだため、新年度の研究費で購入することとした。
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Research Products
(5 results)