2017 Fiscal Year Research-status Report
小児肝移植後合併症のリスク因子の検討と慢性抗体関連拒絶の病態解明
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17K08756
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
入江 理恵 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 病理診断部, 医長 (00365230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 温子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 病理診断部, (非)研究員 (90227736) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肝移植 / 小児 / 急性細胞性拒絶 / 慢性拒絶 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児肝移植後グラフト不全に陥るリスク因子を病理学的に可能な限り早期に検出することは、適切な免疫抑制剤使用を含めた治療法に繋がり、グラフト不全による再移植を回避し得る事から重要な課題である。 2005年から2016年の間に、国立成育医療研究センターにて肝移植が施行された後に再移植となった小児肝移植症例14例の摘出肝と移植後肝生検に関して、免疫組織化学的検討と蛍光抗体法による検討を加えて詳細な組織学的検討を行った。14症例の年齢中央値は3歳8か月で、再移植までの日数の中央値は106日であった。再移植症例14例中9例の摘出肝において中心静脈閉塞様の組織学的変化を認めておりそのうち8例において再移植前の肝生検では、ステロイドパルス療法不応性の中心静脈炎・中心静脈周囲炎を伴う急性細胞性拒絶の所見を認めた。また、国立成育医療研究センターで肝移植が施行された後グラフト不全の為に逝去され、剖検もしくは肝臓のネプロプシーが施行された症例に関して、逝去前の肝生検と逝去時の肝組織に関する組織学的検討を行った。これらの症例の年齢中央値は3歳で、逝去までの日数中央値は83.5日であった。6症例中5例の逝去時肝組織において中心静脈閉塞様の組織学的変化を認め、このうち4症例では逝去前の肝生検にて中心静脈炎・中心静脈周囲炎を伴う急性細胞性拒絶の所見を認めた。中心静脈の変化を伴うステロイドパルス療法不応性の急性細胞性拒絶は、グラフト不全に陥る可能性を示唆する病理学的兆候の一つと考えられ、この知見をThe 2017 Joint International Congress of ILTS, ELITA & LICAGE、第53回日本移植学会総会にて筆頭演者で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
再移植例に関する病理組織化学的検討についてはほぼ順調に進捗している。グラフト不全に陥った症例で免疫組織化学的検討ではC4d陰性であるが、蛍光抗体法ではC4d陽性所見を呈する症例を4例認めた。再移植時摘出肝において抗体関連拒絶の関与の有無を検討するのに蛍光抗体法による検討が効果的であるかどうかは今後症例を更に蓄積して検討を行いたい。 新規肝移植症例や経過観察中の症例14例において、抗ドナー抗体の測定を行い肝生検の組織像との関連性を検討した。抗ドナー抗体陽性となった症例が3例と少数であったことから抗ドナー抗体とグラフト肝障害との関連性の検討についてはやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
肝移植後の抗ドナー抗体測定が保険収載となったことから、症例検討数を増やして抗ドナー抗体陽性症例における組織学的肝障害の程度、小児症例における慢性抗体関連拒絶の頻度等に関して更に検討を行っていく予定である。 また、急性細胞性拒絶、慢性拒絶、抗体関連拒絶等グラフト肝障害を来し得る拒絶反応と肝移植の適応となった原疾患との関連性・頻度や、ドナー肝の病理組織像がグラフトの予後に与える影響に関しても詳細な検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
抗ドナー抗体の測定に関しては、HLA ClassⅠとClassⅡの抗体スクリーニングで陽性となった場合に特異性を見るための更なる詳細な検索が必要となり1件につき8万円以上の費用がかかる。今年度に抗ドナー抗体測定を行った症例においては、陽性症例が予想よりも少なく、抗体スクリーニングのみを行った症例が大部分であったことから検査費用に掛かる費用「その他」が予定よりも低く抑えられたことによる。 翌年度分の助成金と併せて、症例数を増やして抗ドナー抗体値と肝組織障害の関連性の検討を続けていきたい。
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Research Products
(6 results)