2018 Fiscal Year Research-status Report
小児肝移植後合併症のリスク因子の検討と慢性抗体関連拒絶の病態解明
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17K08756
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
入江 理恵 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 病理診断部, 診療部長 (00365230)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 温子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 病理診断部, (非)研究員 (90227736) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肝移植 / 小児 / 急性細胞性拒絶 |
Outline of Annual Research Achievements |
当センターで肝移植が施行された18歳以下の小児例454例において移植後5か月以内に中等度以上の拒絶反応を起こした症例と原疾患との関連を検討した。移植後5か月以内に中等度以上の急性細胞性拒絶反応を起こした症例は454例中83例(18.3%)であったが、原疾患が急性肝不全症例ではその割合は35.1%と高く、半数以上がステロイドパルス療法不応性であった。急性肝不全症例で移植後早期にステロイドパルス療法不応性の拒絶反応を起こした症例のうち5例は再移植となり、これらの症例ではいずれも再移植前の肝生検にて中心静脈炎・中心静脈周囲炎を認めた。原疾患が肝芽腫や代謝性疾患の症例では移植後中等度以上の拒絶を起こす頻度は低かった。 ドナー肝の脂肪変性が小児肝移植例の予後に与える影響を検討した。脳死肝移植では30%以上の大滴性脂肪変性を呈する肝臓はグラフトとして不適とされるが、当センターにおいて両親から30%以上の大滴性脂肪変性を呈する肝臓を移植された小児症例の予後は良好であった。 肝移植後早期に生じる拒絶反応の頻度と重症度は原疾患により差がある事から、原疾患を考慮した治療法の選択が必要であると考えられた。グラフト肝の脂肪変性の程度は、小児の生体肝移植症例では脳死移植に比べて問題とはならない可能性が考えられた。 これらの検討で得られた知見を、The 2018 Joint International Congress of ILTS, ELITA & LICAGE、27th International Congress of The Transplantation Society、第54回日本移植学会総会、第22回肝臓学会大会にて筆頭演者で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロトコール肝生検を行った経過観察症例にて抗ドナー抗体を測定しており、グラフト肝の組織障害の程度と抗ドナー抗体の有無との関連性を検討している。現時点で約90症例において、肝生検の組織像と抗ドナー抗体の測定値が得られており、特に抗ドナー抗体陽性であった約40症例を中心に詳細な検討を行っているところである。進捗状況はほぼ順調である。今後、長期経過観察例を中心として症例数を増やして検討を進めていきたい。 原疾患と移植後早期に生じる拒絶反応との関連性に関する検討はほぼ順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
小児肝移植症例における抗体関連拒絶特に慢性抗体関連拒絶の病態を明らかにするために、更に症例検討数を増やして抗ドナー抗体陽性症例における肝障害の組織像のパターンやその程度、また、抗ドナー抗体陰性症例との肝組織像の比較検討を通して、小児症例における抗ドナー抗体陽性であることがグラフトの長期予後に与える影響に関して検討を行っていく予定である。 また、肝移植後に認められる拒絶反応以外のグラフト肝障害像と原疾患との関連性・頻度や、ドナー肝の病理組織像がグラフトの予後に与える影響に関しても詳細な検討を進めていく予定である。 肝移植後早期~晩期に生ずるグラフトの障害には、急性細胞性拒絶、抗体関連拒絶、慢性拒絶に加え、感染症や胆道系合併症、循環障害、薬剤など様々な要因が考えられる。その中でグラフト不全を来し得る難治性拒絶を、原疾患の病態をも考慮に入れて病理学的に早期発見するとともに病態解明に努めることが今後の課題である。
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Causes of Carryover |
肝移植症例における抗ドナー抗体価測定が2018年度より年1回の測定に関しては保険収載となったことから、測定費用にあてていた「その他」の支出金がやや減少した。 保険収載で測定できる抗ドナー抗体は年1回のみであることから、新規症例における移植前の抗ドナー抗体測定や年2回以上の測定が必要となる症例に対して助成金を使用していく予定である。
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Research Products
(8 results)