2017 Fiscal Year Research-status Report
慢性炎症による大腸発癌に果たすドライバー遺伝子の決定
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17K08761
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岡田 太 鳥取大学, 医学部, 教授 (00250423)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 炎症発癌 / ドライバー遺伝子 / 大腸発癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
散発性の大腸癌に対して炎症による大腸癌は,発癌に至る遺伝子変異等の導入の時期も順序も異なる.当該研究は大腸の炎症発癌における真のドライバー遺伝子の同定を目的に,マウスの腸管上皮組織をオルガノイド培養し,多段階発癌過程のどの遺伝子変化が炎症性の発癌と結び付くのかを検討した.炎症の誘発には急性炎症もしくは慢性炎症を惹起する異物を用いた.K-ras遺伝子変異とAPC遺伝子ノックダウンを組み合わせた雄マウス由来の腸管組織由来オルガノイドを雌のヌードマウスに生じさせた慢性炎症下に置くと移入直後より増殖することを検証した.また,p53遺伝子ホモ欠損マウスから得た腸管組織を慢性炎症下に置くと,移植後3ヶ月頃より増殖したが組織型はすべて線維肉腫であった.増殖腫瘍が移植した雄マウスの腸管組織に由来することをY染色体を指標に確認した.しかし,p53遺伝子ホモ欠損マウスから得た腸管組織を急性炎症下に置いても腫瘍増殖は観察されなかった.また,p53遺伝子ヘテロ欠損マウスの腸管組織では腫瘍増殖を観察することはできなかった.次年度の研究実施に向け,p53遺伝子ホモ欠損マウスから得た腸管組織由来のオルガノイドを共通の実験材料とするために,これを培養増殖させ保存を完了した.さらに,p53遺伝子ホモ欠損オルガノイドに導入する1)癌抑制遺伝子(DCC,APC, p53)のノックダウン用shRNA,2)COX-2遺伝子発現ベクター,3)癌遺伝子(K-ras)の活性化用にLoxP-Stop-LoxP-K-rasG12Dノックインマウスの腸管上皮からオルガノイドを作製した.上記の遺伝子発現改変用核酸のレンチウィルスを介した導入条件等の再検討と,目的通りに遺伝子が発現の抑制あるいは活性化・誘導を起こしていることを確認する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画に則った計画実験をほぼ遂行し,当該研究の最大の関心である大腸の炎症発癌に関わるドライバー遺伝子として,p53遺伝子変異に加えてどのような遺伝子変異が必要であるのかを決定する候補遺伝子の発現改変用核酸の作製・準備を完了した.加えて,実験条件を極力整えることを目的として,使用する腸管オルガノイドは同一のものを大量に培養し保存も完了している.しかしながら,研究に使用予定であった活性化K-ras用のLoxP-Stop-LoxP-K-rasG12Dノックインマウスの系統維持が途絶えたことから,再現性を確認する際のことを想定し,現在凍結精子からの個体化を準備中である.少なくとも活性化K-rasの関与に係わる検証には,暫く時間を要するものと想定されるが,これ以外の当初予定していた癌抑制遺伝子群の関与は当初の予定通り平成30年度に遂行できる状況にある.
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Strategy for Future Research Activity |
若干の遅れはあるものの,概ね当初に予定していた検証ならびに確認を終え,実験材料等の準備がほぼ完了している.従って,当初の研究実施計画に従い,研究期間内に結論を得ることが可能な状況にあり,着実に遂行する予定である.
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Causes of Carryover |
目的の遺伝子発現が生じているか否かに関する検討が遅れたために,この解析に必要な物品費等の支出が行われずに次年度使用額を生じた.しかし,次年度中には当初計画のとおり実験を継続実施する予定であるため,増額分を含めて使用することになる.
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Research Products
(11 results)