2017 Fiscal Year Research-status Report
胆道がんの臨床病理学的特徴を規定する遺伝子発現・異常の同定と診断・治療への応用
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17K08769
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
尾島 英知 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (80342905)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胆道領域がん / 細胞株 / 細胆管細胞癌 / 遺伝子発現 / 遺伝子変異 / 放射線感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性がんである胆道領域がんの治療成績向上、さらには発がん機構の解明のためには、胆道領域がんを子細に観察して得られた生物学的特性に関わる臨床病理学的特徴を、分子病理学的・免疫組織学的手法を用いて詳細に解析し、得られた機能分子が病理学的診断や治療への応用・適応が可能か否かを検証することが有効な研究手法のひとつと考えられる。本研究においては、豊富な胆道領域がんバイオリソースを用いて分子病理学的検討を施行するだけでなく、胆道領域がん前臨床試験の効率的なシステムの構築と放射線・化学療法による胆道領域がんの新たな臨床病理学的効果判定の確立を目指し、治療成績向上に寄与する機能分子の診断と治療への応用・適用の検証を行っている。 平成29年度は、血流動態をはじめとする様々な臨床病理学的特徴が通常の腫瘤形成型肝内胆管癌と異なる細胆管細胞癌を研究対象とし、その生物学的特性を規定する臨床病理学的特徴と深く関連する候補分子の同定を試みた。具体的には、遺伝子解析結果と紐付けされた腫瘤形成型肝内胆管癌45症例の組織学的検討を行い、細胆管細胞癌の特徴を有する病変として12症例を抽出し、通常の腫瘤形成型肝内胆管癌と分け、遺伝子変異データおよびRNAマイクロアレイデータを用いて両者に差がある遺伝子を候補分子として、抽出を試みた。 さらに、胆道癌細胞株17種類を用いて放射線感受性および放射線照射後の核形態の変化、細胞の機能変化の検討を行った。平成29年度は、多数の細胞株に対してin vitroで放射線照射を行い、各細胞ごとの感受性や核形態変化を検討し、基礎データの取得を行った。さらに実臨床で行われた放射線治療後標本との比較検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
胆道領域がんの生物学的特性を規定する臨床病理学的特徴と関連する候補分子の同定に関しては、細胆管細胞癌を研究のターゲットにし、通常型肝内胆管癌と比して、有意な遺伝子発現や変異がないかを“紐付け”可能な分子病理学的データベースを用いて解析することで、候補分子を複数抽出した。しかし、症例数が少ないために、有意な機能分子となるかの検討が充分ではない状態であり、さらに、実際の組織検体由来の核酸を用いた定量的Real-Time PCR法による解析を用いて確認まで実行されていないため、やや遅れていると判断した。 一方、放射線照射による細胞障害の検討と組織学的治療効果判定基準の作成への試みに関しては、in vitroでの方法論確立がやや難渋しているが、研究予定では平成30年度に行う予定であったことから、比較的順調と判断した。しかし、当初の計画では薬剤添加後に放射線照射を行い、実臨床に近い形で胆道領域がん前臨床試験の効率的なシステムの構築と放射線・化学療法による胆道領域がんの新たな臨床病理学的効果判定の確立を行う予定だったが、基本的な放射線照射による細胞株の感受性や細胞障害のデータを取得することがまずは重要と考え、抗がん剤添加の前処理は行わず、放射線照射のみの検討とした。
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Strategy for Future Research Activity |
細胆管細胞癌の生物学的特徴を規定すると考えられる候補分子に対して、実際の組織検体由来の核酸を用いた定量的Real-Time PCR法による解析を用いて確認を行い、候補分子のさらなる絞り込みを行う予定である。さらに、慶應義塾大学病理学教室において、凍結組織包埋剤を用いて凍結保存し蒐集されている胆道領域がんの手術材料(診療の為に使用された残余の組織)を用いた遺伝子変異や定量的Real-Time PCR法による解析をvalidation studyとして行い確認する。これらの検討で、候補分子の絞り込みが有効と判断された場合は、豊富なバイオリソースを用いた免疫組織学的検討による機能分子の同定を行う予定である。 一方、放射線照射による細胞障害の検討と組織学的治療効果判定基準の作成への試みに関する検討については、胆道癌細胞株に核内に発現する蛍光タンパク質を導入し、定点連続撮像機械を用いて、放射線照射後の核形態の評価および、遊走能や浸潤能などの機能評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に開催された国際学会の旅費の決済を行うことができなかったことと、研究結果から購入予定であった抗体試薬が、海外在庫のため年度末までに納品が不可能と判断されたため購入を控えたことが次年度使用額が生じた理由である。平成30年度には、上記の決済と抗体試薬購入などで、消費される予定である。
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Research Products
(1 results)