2017 Fiscal Year Research-status Report
インスリン分泌能規定因子としての脂肪酸動態:新規モデルマウスを用いた解析
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17K08780
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅井 明 東北大学, 農学研究科, 特任准教授 (30500011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉原 仁 日本医科大学, 医学部, 助教授 (60183414)
都築 毅 東北大学, 農学研究科, 准教授 (00404848)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵島 / インスリン分泌 / 脂肪酸 / 糖尿病 / モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、Prone/Resistant両系統マウスの膵島における脂肪酸輸送・代謝関連分子群の遺伝子発現レベルについての網羅的解析を行った。RNA-Seqの結果をもとにqPCR法での発現レベルの確認を行い、これまでに明らかとなっていたCd36に加えて、多数の脂質代謝関連遺伝子の発現レベルに両系統間で差異があることを認め、これらの結果は膵島細胞内脂肪含量とも相反しないものであった。またPparやRxrの発現レベルにも差のある傾向が見られたことから、両系統の膵島間では、脂肪酸・脂質代謝制御系に包括的な差異があることが示唆された。また、細胞内脂肪含量との関係から最も注目しているCd36については、その発現レベルの差異が、両系統間で世代を超えて維持されていることも確認された。また、Prone/Resistant両系統マウスの膵島におけるグルコース応答性インスリン分泌能(GSIS)の差異に関連して、グルコース応答性のATP産生能について詳細な解析を行った。その結果、GSISに明らかな差異を認めるにもかかわらずATP産生には両系統膵島間に有意な差は認めなかった。したがって、両系統膵島間におけるGSISの差異は、グルコース代謝によるATP産生の違いによるものではなく、その下流においてインスリン分泌顆粒放出に至るまでの制御機構に何らかの違いがあることによるものと推定された。この推定は両系統の膵島間でKCl応答性インスリン分泌能にも明らかな差異を認めるという結果からも支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究実施計画では膵島を用いた脂肪酸取込試験を行う予定であったが、本年度中に実施に至らなかった。測定系の検討は進んでおり、実施に必要な器具、試薬類もほぼ揃っていることから、これについては次年度中に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度未実施となっていたProne/Resistant両系統のマウス膵島を用いた脂肪酸取込試験を行い、脂肪酸取込能の両系統膵島間での差異を明らかにする。また、両系統マウス膵島の初代培養やβ細胞株を用いて、抗体を用いたブロッキング試験や発現量調節試験(ノックダウンや過剰発現)を行い、脂肪酸動態やインスリン分泌能などがどのように変化するのかを検討する。これらの結果から、「候補分子」が脂肪酸動態やインスリン分泌能に及ぼす影響を検証し、発現量調節が実際にインスリン分泌能に影響をもたらす分子を「責任分子」として選抜する。さらに「責任分子」として選抜された脂肪酸輸送・代謝関連分子については、その発現を調節するさらに上流の因子や、インスリン分泌能調節に至る下流の作用機序について、詳細な検討を加え、これらをもとに、「脂肪酸がインスリン分泌能を低下させるに至る分子基盤」の推定経路を策定する。
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Causes of Carryover |
本年度実施を予定していた試験の一部にやや遅れがあり、これに関わる費用の一部を次年度使用額とした。遅れのあった試験は次年度中に実施予定であり、当該額をその費用に充てる。
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Research Products
(6 results)