2019 Fiscal Year Research-status Report
寄生虫感染時の宿主翻訳制御におけるP-bodyの役割
Project/Area Number |
17K08782
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
瀬戸 絵理 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40431382)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 感染応答 / mRNP / P-body / Trypanosoma cruzi |
Outline of Annual Research Achievements |
Processing body (P-body)は真核生物における細胞質mRNP(mRNA-蛋白質複合体)顆粒のひとつで、mRNAの分解や翻訳抑制を担う。P-bodyは定常状態の細胞にも存在しているが、ストレス刺激などの環境の変化でさらに形成が誘導される。そしてそこにはポリソームを離れたmRNAと翻訳不活化を担う蛋白質との複合体がリクルートされてくる。寄生虫感染の初期には、自然免疫応答として宿主のストレス応答関連蛋白質やサイトカインなどの翻訳調節が迅速かつ的確に行われていると考えられるが、その制御機構については不明な点が多い。これまでの研究で、偏性細胞内寄生原虫Trypanosoma cruzi (T.cruzi )のin vitro感染でP-bodyの形成が誘導されることを見出だした。またsiRNAによってP-bodyをノックダウンした細胞では、T. cruzi の侵入および増殖が亢進した。この結果から、感染で誘導されるP-bodyでT. cruziの侵入や増殖に対して防御的に機能する蛋白質の翻訳が調節されていることが示唆された。そこで、寄生虫感染防御におけるP-body の役割をさらに明らかにするために、CRISPR/Cas9ゲノム編集システムを用いてP-bodyの必須構成蛋白質であるEDC4をノックアウトした細胞の樹立を試みた。また感染によってP-bodyにリクルートされてくる宿主mRNAの同定を目的とし、分画遠心法によるmRNP画分の精製を試みた。ウェスタンブロッティング法により複数種類のP-body構成蛋白質が精製後の画分に濃縮されることを確認できたことから、本法によりP-bodyを分画精製できたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度はCRISPR/Cas9システムを用い、T. cruziの感染許容細胞であるHT1080細胞でP-body形成に必須な蛋白質をノックアウトした細胞株を樹立し、感染後の時間経過に伴ったストレス応答関連蛋白質やサイトカイン産生パターンの変化を調べる予定であった。しかし、HT1080細胞へのCas9導入効率が低く、導入法の検討に時間を要したことから、研究は当初の計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム編集後の細胞集団からクローン化した細胞のジェノタイピングを行い、ターゲット遺伝子の両アレルに変異が導入されたと考えられるクローンを複数取得した。これらのクローンにおけるP-bodyのノックアウトを免疫染色法により確認する。続いて野生型細胞とノックアウト細胞にT. cruziを感染させ、継時的にRNAを回収してトランスクリプトーム解析を行う。また感染細胞と非感染細胞から分画精製したP-bodyからRNAを抽出しcDNAライブラリを作製する。そして次世代シーケンシングやマイクロアレイを用いた比較解析により、感染時特異的にP-bodyで翻訳調節を受ける遺伝子の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
P-bodyノックアウト細胞の樹立とP-body画分の精製に想定以上の時間を要したため、未使用額が生じた。令和2年度の経費の主な用途は消耗品である。その内訳は細胞培養に必要な培地、血清、デイッシュなどのプラスチック製品、ガラス器具、抗体、オリゴ作製費、試薬類である。また国内学会で研究成果を発表するために必要な旅費も使用予定である。
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Research Products
(2 results)