2017 Fiscal Year Research-status Report
STIM1機能異常と高血圧:遺伝子改変SHRSPによる検討
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17K08787
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大原 浩貴 島根大学, 医学部, 助教 (10609225)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高血圧 / SHRSP / 交感神経 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト本態性高血圧モデルである脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)の高血圧成因の一つとして、交感神経系の過剰な活性亢進による神経性機序が指摘されている。我々は、SHRSPにストレス負荷を与えた際に、過剰な交感神経活性の亢進と昇圧を引き起こす原因遺伝子候補として、小胞体カルシウム貯蔵センサーSTIM1を同定した。本研究では、SHRSPにおけるSTIM1機能異常の原因となるナンセンス変異を、新規遺伝子改変技術であるCRISPR/Cas9システムにより正常型に置換した「Stim1ノックインSHRSP」を作成し、その表現型を評価した。本年度は、京都大学で作成された後に本学に搬入されたヘテロ雌をSHRSP/Izmと交配し、これにより得られたヘテロの雌雄ペアを交配することでStim1の両アレルが正常型配列に置換されたホモ個体を確立した。DNAシーケンシングによりoff-target変異が見られないことを確認した。アストロサイトを単離培養してカルシウムイメージングによりストア作動性カルシウム流入(SOCE)活性を評価し、ノックインSHRSPではSHRSPよりも有意に高いSOCE活性が見られることを確認した。SHRSP/Izmを対照として12、16、20週齢でのベースライン血圧を比較したところ、有意差は見られなかった。冷温・拘束ストレス負荷下における尿中カテコールアミン排泄量および血圧変動(テレメトリーシステムによる)をストレス感受性の指標として評価したところ、2系統間で有意差は見られなかった。これまでの解析結果からは、STIM1の機能異常とSHRSPの過剰な交感神経活性の亢進との関連は低いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SHRSPをベースにStim1遺伝子変異を正常型に置換したStim1ノックインSHRSPを確立し、個体レベルでの表現型解析を計画通りに実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は計画通り順調に進んだが、これまでの解析結果から判断すると、我々の予想に反してStim1はSHRSPにおいて過剰なストレス応答を引き起こす原因遺伝子ではないと考えられた。ただし、Stim1と協調的に働く因子が存在し、STIM1単独の機能回復では生体レベルでは十分な効果が見られなかった可能性がある。あるいは、我々が過去の報告(Ferdaus et al.2014 PLoS One)で見出した別の候補遺伝子の中に、本当の原因遺伝子が存在する可能性も否定できないため、その点についても検討を行う予定である。また、個々の組織や細胞レベルであれば、STIM1と高血圧発症との関連性を見出させるかもしれないので、当初計画に挙げていた血管収縮・弛緩反応への影響についても予定通り検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
テレメトリー送信機の再充電を行うことなく実験を実施できたこと、ラット個体での表現型解析の結果に基づき培養細胞実験を一部実施しなかったことなどから、繰越金が生じた。交感神経系の制御に着目したSHRSPの高血圧病態解明のため、本研究でターゲットとしたStim1以外の分子についても検討を行う必要性が生じたため、それらの解析に使用する。
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