2018 Fiscal Year Research-status Report
STIM1機能異常と高血圧:遺伝子改変SHRSPによる検討
Project/Area Number |
17K08787
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大原 浩貴 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (10609225)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 高血圧 / 脳卒中 / SHRSP / コンジェニック系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)における高血圧原因遺伝子候補としてStromal interaction molecule-1 (Stim1)を同定した。本研究の目的は、SHRSPのStim1遺伝子配列上のナンセンス変異を、CRISPR/Cas9で修復した「Stim1ノックインSHRSP」を作製し、STIM1機能異常の高血圧発症への寄与を個体レベルで検証することであった。昨年度、順調に計画は進行したが、我々が予想したストレス負荷への過剰な交感神経活性亢進に対する抑制的な効果は観察されなかった。この理由の一つとして、高血圧は多因子性疾患であり、STIM1以外の他の遺伝子との協調的作用が必要であることが考えられる。本年度は、STIM1と協調的に働く遺伝子の同定も想定して、SHRSPよりも早期に脳卒中を自然発症するコンジェニック系統(SPrch1.71)の解析を行った。この系統は、我々がStim1を同定する過程で作製した系統の一つである(Ferdaus et al. PLoS ONE 2014)。脳(大脳皮質・脳幹)、心臓、腎臓、副腎、脾臓をターゲット臓器として、コンジェニック領域の遺伝子発現量をSHRSPと比較した。SPrch1.71では、副腎の葉酸受容体(Folr1)が低発現、心臓・腎臓・脾臓のArt2bが高発現であった。まず、Folr1を有力候補として各種解析を行った。副腎におけるFOLR1の局在を免疫組織化学染色で調べたところ、球状帯(グルココルチコイド合成)、束状帯(アルドステロン合成)の領域において陽性染色を認めた。コルチコステロン、アルドステロン、ホモシステインの血清濃度を2系統間で比較したが、いずれも有意差は認められなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複数の臓器をターゲットとする遺伝子発現解析により、SPrch1.71における脳卒中早期発症の原因遺伝子候補を同定したことに加え、血清学的解析等によりその推定されるメカニズムについて検討を重ねたが、原因遺伝子の同定には至っておらず、かつ、仮説としたSTIM1との協調的作用については全くの未知であるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
SPrch1.71を用いた高血圧・脳卒中原因遺伝子の探索を引き続き行う。同定された候補遺伝子の中には、特にT細胞系でSTIM1と機能相互することが想定される遺伝子が存在することから、FACSによる細胞分画解析などを行うことで、その分子機序の検討を行う。
|
Causes of Carryover |
予想に反して、新たに作製したStim1ノックインSHRSPにおいて高血圧症に対する抑制効果が見られなかったため、計画を検討し直す必要性が生じた。次年度使用額が生じた理由は、これに起因する。Stim1を候補遺伝子として同定するにあたって作製されてきたコンジェニック系統の表現型解析に立ち返って、STIM1機能との相関についても考察しながら新たな視点での解析を実施中であり、次年度の研究経費はその目的のために使用する。
|
Research Products
(3 results)