2018 Fiscal Year Research-status Report
CAMDIによる中心体制御とストレス時の脳高次機能に与える影響の解析
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17K08793
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
福田 敏史 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (50372313)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | CAMDI / ストレス / PTSD |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者がCAMDIと結合して活性を抑制すると論文報告したHDAC6は、基質の一つとしてグルココルチコイド受容体(GR)の安定性を制御するHSP90が知られている。HSP90の脱アセチル化型は活性化型でありGRを安定化することが知られている。すなわちCAMDIノックアウトマウスではGRの安定化が促進されている可能性が示唆された。GR蛋白質量を定量した結果、GRの安定化が認められた。一方、血中グルココルチコイド量は減少しており、日内変動の量も振幅の減少が認められた。これらの結果から、HPA軸に異常が生じている可能性が考えられた。ストレス脆弱性を示す可能性が考えられたため、慢性的な社会的敗北ストレスを付加した後に生化学的、行動学的試験を行った。血中グルココルチコイド量を測定したところ、野生型マウスの10分の1程度にまで減少が認められた。これらの結果から、CAMDIノックアウトマウスにおいてHPA軸の過剰な負のフィードバックによる異常が生じている可能性が考えられた。低コルチコステロン血症は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者に認められることが良く知られている。そこで、慢性的な社会的敗北ストレスの後3週間経過してから社会性の行動試験を行った。野生型マウスはストレス前とほぼ変わらない社会性を示したのに対して、CAMDIノックアウトマウスはストレス直後と変わらない社会性を示した。この結果から、3週間経過後も社会的敗北ストレスを忘れられていない、すなわちPTSDと良く似た現象が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会的敗北ストレスによる行動への影響を調べた結果、PTSD様行動を確認した。予想していなかった興味深い結果が得られつつあることから、概ね計画通りに進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
CAMDIノックアウトマウスの自閉症様行動をHDAC6特異的阻害剤で回復させることができることを報告している。当該年度の結果、社会的敗北ストレスによるPTSD様行動の表出が確認された。一方、広範なHDACの阻害剤であるSAHA(ボリノスタット)は、「皮膚T細胞性リンパ腫」の治療薬として既に認可済みの薬剤である。これらのことから、適用の変更で精神疾患の治療に応用できる可能性が示唆される。今後は、CAMDIノックアウトマウスにおいてSAHAを投与することによる影響について、胎生期・誕生後・成体期など投与時期の検討、ならびに自閉症様の行動異常を回復できるかの詳細な検討を行い、ドラッグリポジショニングの可能性を検討する。 ライブイメージング法を用いてEGFP-CAMDIとともに、中心体を同時に標識し(mCherry-centrin2遺伝子を導入)、中心体や細胞体が移動する際の「いつ、どこ」のタイミングでCAMDIが関与するのかを長時間に渡って記録してその詳細を明らかにする。また、CAMDIが分解される分子メカニズムに関して、結合蛋白質の同定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた人件費・謝金の使用が無く、また旅費も遠方の学会参加が無く当初予定より少ない支出であったため次年度使用分が生じた。翌年度は研究支援者の雇用および物品費として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)