2020 Fiscal Year Research-status Report
新規NF-κB抑制因子による炎症性腸疾患における慢性炎症の制御機構
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17K08795
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
川村 宏樹 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (20333495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 雅也 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50334678)
高橋 雅彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80377192)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マクロファージ / USP10 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 本研究は新規NF-κBの抑制因子のUSP10による炎症性腸疾患における慢性炎症の分子機構を解明して、臨床応用の基盤研究を目的とする。令和2年度は、1.細胞内でのUSP10のNF-κBに対する制御機構の解明、2.USP10と炎症性サイトカインの関係する炎症反応への影響の検討を引き続きおこなった。 1.LPS刺激におけるJ774.1 USP10-KD細胞のReal-time PCR法によるサイトカインの測定: 前年度までに、J774.1細胞に比べJ774.1 USP10-KD細胞をLPSで刺激するとTNFαとIL-6の産生が増加すると共に増殖スピードが遅くなることが明らかになった。これらの結果から、J774.1 USP10-KD細胞のTNFαとIL-6の産生増加は一つの細胞がサイトカイン産生能の増加によるものだと推測したが、直接的な証明はおこなっていなかった。そこでReal-time PCR法でおこなった結果、J774.1細胞に比べJ774.1 USP10-KD細胞をLPSで刺激するとTNFαとIL-6の産生が増加した。このことから、作業仮説が証明された。 2.細胞内でのUSP10の炎症性サイトカインに対する制御機構の解明: 前年度までに、J774.1 USP10-KD細胞の炎症性サイトカインの産生能の増加は、炎症性サイトカインの翻訳に関係しているα因子とUSP10との相互作用が推測されるデータが得られた。そこで、詳細な解析をおこなうためにJ774.1 USP10-KO細胞を作製した。しかしながらJ774.1細胞の性質からUSP10遺伝欠損の手法に対して感受性が高く、増殖能の減少やサイトカイン産生能の減少が見られた。これを改善すべく、以前使用したRAW264.7細胞を用いてUSP10-KO細胞を作製したので、作業仮説を証明する検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回再度と期間の延長申請をおこなった。その理由は新型コロナウイルスの蔓延により、大学が入構制限による学生への対応、大学の教育業務の大きな変更、研究の実施に対して規制があったためである。4月から急遽大学の入構制限が実施され、前期は学生教育で座学はメディア授業に全て変更になり、準備もしていない状態で授業コンテンツの作成に追われた。後期は全て感染対策をした上で対面の実習と国試対策で、十分な研究時間が取れなかった。 しかしながら、5.研究実績の概要に記述したように炎症性サイトカイン増加にはα因子の関与が示唆される新しいでデータも得ることができた。RAW264.7 USP10-KO細胞の作製が終了したので、最後の検討をおこなう準備が完了した。よって研究全体を考えれば、少し遅れぎみであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの進行状況や結果を踏まえて最終年度は、1.RAW264.7 USP10-KO細胞を用いて細胞内でのUSP10と炎症性サイトカインの翻訳に関するα因子の相互作用の解明、2.RAW264.7 USP10-KO細胞を用いて各TLR経路の刺激によるα因子の作用、3.炎症性腸疾患マウスモデルでの解析の3を中心に研究に取り組む。 1.RAW264.7 USP10-KO細胞を用いて細胞内でのUSP10と炎症性サイトカインの翻訳に関するα因子の相互作用の解明: USP10がα因子に対して直接会合するのか、または何かを介して作用するのか明らかにする。このには、USP10-KO細胞にUSP10を戻した細胞やUSP10の多量発現細胞を用いる予定である。 2. USP10とNF-κBの関係する炎症反応への影響: LPS刺激(TLR4)とZymosan刺激(TLR2)のTLR経路の場合、α因子が同様にUSP10と作用するのか検討を進める。その後、USP10活性化薬の一つであるレスベラトロールをin vitroの実験系にしようして、炎症抑制作用を検討する。 3. 炎症性腸疾患マウスモデルでの解析: 引き続き、in vitroでの実験で得られた結果が、モデルマウス由来のマクロファージでも同様や否かUSP10とα因子を中心とした解析を更に進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は新型コロナウイルスの蔓延により、大学が入構制限による学生への対応、大学の教育業務の大きな変更、研究の実施に対して規制があったためである。4月から急遽大学の入構制限が実施され、前期は学生教育で座学はメディア授業に全て変更になり、準備もしていない状態で授業コンテンツの作成に追われた。後期は全て感染対策をした上で対面の実習と国試対策で、十分な研究時間が取れなかった。そのために研究に使用する試薬や消耗品の購入が減少した。翌年度は研究時間を確保して、本年度で実施できなかった実験の試薬と消耗品の購入にあて、計画的に使用する。
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