2018 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫感染細胞における脂質リサイクリングと膜多様性構築機構の解析
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17K08805
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徳舛 富由樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (60733475)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マラリア / 脂質膜 / リン脂質 / リピドミクス / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究ではマラリア原虫感染赤血球における構造、化学的均衡(バランス)が保たれるメカニズムに関して、生化学的、生物物理的手法とオミックス解析を用いて解析している。これまで、赤内型マラリア原虫と性分化したガメトサイト期の脂質プロファイルを比較した実験を続け、ガメトサイト期には不飽和脂肪酸をもつリン脂質に特徴付けられる脂質プロファイルが維持されることを見つけてきた。また不飽和脂肪酸を持つリン脂質が少ない環境下では、外部より不飽和脂肪酸を補充してやることでガメトサイトへの分化が改善されることを確認した。このデータは、原虫ステージごとに最適な脂質プロファイルが存在することを示唆するものであり、生化学的にも構造(物理)的にも重要な情報である。結果はすでに投稿済みである。また、リン脂質プロファイル維持に必要と思われるリゾリン脂質アシル転移酵素に焦点をあて、ヒトの酵素と同じ機能ドメインを持つ原虫タンパク質を発見した。またその活性がパルミチン酸、オレイン酸、そしてDHAを導入できることは確認済みであり、ヒトの酵素に比べて特異性が低い可能性を示している。本年度はこの酵素を過剰発現した原虫を作成し、現在はこの過剰発現株でのリン脂質プロファイルの変化を確認中である。また蛍光タンパク質(Dendra)を結合した融合タンパク質を発現する株を作成しており、その局在が原虫内にとどまっていることが確認できた。一方、ガメトサイト期には細胞内膜構造状に局在が観察され、Asexual期とは異なっていた。この結果は、ヒトではERに局在しているタンパクが、マラリア原虫ではステージによって局在が変化し、原虫の生活環に合わせた脂質プロファイルの一端を担っている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
このプロジェクトでは、目的タンパク質の過剰発現株とそれにともなう脂質解析に関しては順調に進んでいる。脂質代謝関連タンパク質に関していくつもの遺伝子改変原虫を作成する必要があるが、ノックアウト株の作成が技術的理由により遅れている。また構造解析では、電子顕微鏡解析も行っているが、要求されるデータ品質に到達させるために試料作成コンディションの改良に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ノックアウト株の完成と目的遺伝子と同様の働きを持つ遺伝子の探索とその改変に注力する。また蛍光タンパク質融合酵素は作成できているため、その細胞内局在をよりダイナミックな系において行っていく。電子顕微鏡に関しては、試料作成プロトコル改良が終わり次第、高解像度電顕画像を取得する。またアシル転移酵素に関して、その基礎的酵素活性に関して論文を投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた共同研究施設使用料、購入予定であった試料を次年度に使用、購入するように変更があったため。
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Research Products
(2 results)