2017 Fiscal Year Research-status Report
クロストリジウム・ディフィシル(CD)の環境適応機構の解明
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17K08822
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
齋藤 良一 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 准教授 (00581969)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クロストリジウム・ディフィシル / デオキシコール酸 / 増殖 / トキシン / 芽胞 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
クロストリジウム・ディフィシル(CD)は、腸管内細菌叢共生バランスの破綻時に増殖し、産生する毒素により下痢症や偽膜性腸炎などのCD感染症を惹起する。一方、胆汁酸は多くの細菌に対し毒性を示すが、CD感染症患者腸管内におけるCDの生活環に重要な役割を果たしていることが知られる。しかし本菌の病原性や芽胞形成などの代謝調整制御に及ぼす影響など、依然として不明な点が多いことから、今年度は、二次胆汁酸のデオキシコール酸(DCA)がCDの増殖能、毒素産生能および芽胞形成能に与える影響を解析した。 TcdA、TcdBおよびバイナリートキシン産生株(2株)、TcdAおよびTcdB産生株(1株)、毒素非産生株(1株)を用い、上記の検討を行った結果、DCAは濃度依存的にCD栄養体の発育を抑制し、さらに培養上清中の毒素産生量や主要毒素遺伝子tcdBの菌体内転写レベルを減少させることが明らかとなった。またDCAは、芽胞形成解析用培地における芽胞形成率や、芽胞形成に関わる遺伝子spo0Aの菌体内転写レベルを減少させることが確認された。これらの増殖能、毒素産生能および芽胞形成能はCD遺伝子型で差が認められなかった。一方、DCAに影響を受けるCD遺伝子群を網羅的に同定するためトランスクリプトーム解析を行った結果、シグナル伝達や膜輸送に関わる遺伝子が同定された。一方、トランスクリプトーム解析を行った結果、シグナル伝達や膜輸送に関わる遺伝子群がDCAに影響を受けることを見いだした。 以上より、DCAは本菌の増殖能だけでなく、毒素産生能や芽胞形成能も抑制することが明らかとなり、ヒト腸管内DCA量の減少がCD感染症の発症に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DCAの増殖能、毒素産生能および芽胞形成能に及ぼす影響だけでなく、ゲノムワイドな遺伝子発現解析により影響を受ける遺伝子群を網羅的に同定するに至ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析にて同定された発現変動が大きい遺伝子群は、DCA濃度、培養時間、CD遺伝子型等の関係性を明らかにする予定である。また胆汁酸だけでなく、様々な環境に対するCDの適応機構を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
トランスクリプトーム解析やリアルタイムPCRにかかる費用が当初の見込みよりも低く抑えられたため。
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Research Products
(9 results)