2018 Fiscal Year Research-status Report
ビブリオコレラを二系統に分類する遺伝子座MS6_A0927の機能解析
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17K08826
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 和久 大阪大学, 微生物病研究所, 特任講師(常勤) (40420434)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コレラ菌 / 遺伝子機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Vibrio choleraeは遺伝子座MS6_A0927にmetY(M)遺伝子(1,269 bp)あるいはluxR-hchA(LH)遺伝子(約1,600 bp)のいずれかを有し、これにより2系統に大別される。LH遺伝子を破壊したV. cholerae 32426(⊿LH)株は、親株に比して通常の栄養培地における生育には変化がないが、コレラ毒素産生能は著しく低下する等、いくつかの表現型の変化が認められた。RNA-seq解析を行ったところ、変異株においてrpoS及びmutS遺伝子の発現が確認されなかった。そこで、当該遺伝子領域に対してPCR及びシークエンスを行ったところ、rpoS-mutS遺伝子領域の脱落が認められた。さらにV. choleraeのビルレンス遺伝子の主要な転写制御因子の一つであるToxRをコードする遺伝子に突然変異中に終始コドンが生じる変異も確認された。この変異株のToxR及びToxSの発現量は親株に比して著しく高かったが、ToxTおよびコレラ毒素遺伝子の発現量は低値を示した。これらの結果より、ToxRの遺伝子変異が、32426(⊿LH)株のコレラ毒産生の低下をもたらしたと推定される。 ダブルクロスオーバーの相同組換えによりLH遺伝子を破壊した結果であるが、標的以外の複数の遺伝子にも変異が生じていることが明らかになった。32426(⊿LH)株に変異が多数発生したメカニズムについては次年度以降の解明を待たねばならない。LH遺伝子の破壊株の作製を再度試みたところ、rpoS-mutS領域、toxR遺伝子には変異は認められなかった。現在、全ゲノムシークエンスを行い、LH及びMの機能解析に用いることが出来る標的遺伝子のみを欠失した変異株であるか確認中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重要な機能を担うrpoS及びmutS遺伝子が、試験管内での培養中に、コレラ菌のゲノムから自然に脱落するという現象は報告もなく、全く想定していなかった。再度変異株の作製及びゲノム配列の確認などに時間を要しているが、最終的に標的遺伝子のみを欠失した変異株が作製できたようである(現在、全ゲノムシークエンスで確認中)。変異株32426(⊿LH)だけが特異的な表現型を示した要因の一端が解明された。
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Strategy for Future Research Activity |
M遺伝子産物はo-acetylhomoserine sulfhydrylaseの機能を担っていることが推定されるため、メチオニンの中間産物(O-acetyl-L-homoserine)と硫化物(Methanethiolなど)を合成最小培地に添加し、親株と変異株間での増殖能の差異を比較する。その際、添加した硫化物から亜硫酸、硫酸への酸化を制限するために、無酸素または低酸素条件下で培養する。一方、LH遺伝子についての解析は、酸などによる酸化ストレス耐性に寄与するのではないかという仮説に基づき、人工胃酸でコレラ菌にストレスをかけ、その後、高濃度の重炭酸塩(膵液を想定)で中和後、菌の生存率を比較する実験などを行う。
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Causes of Carryover |
想定外の実験結果により、全ゲノムシークエンス等の追加実験が必要となり、年度使用額の変更が生じたため。
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Research Products
(1 results)