2017 Fiscal Year Research-status Report
外的環境刺激に応答した腸炎ビブリオの3型分泌装置発現制御機構の解明
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17K08828
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 重輝 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (30506499)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸炎ビブリオ / 発現制御 / 3型分泌装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原細菌は感染時に外的環境の変化に応答し、病原性に関わる遺伝子を効率的に発現することで感染を成立させると考えられている。腸炎ビブリオは食中毒菌であるが、本来は海水で生息する本菌にとって、感染部位であるヒト腸管内では温度・塩分濃度などの外的環境の大きな変化に曝されると考えられる。実際、in vitroでこれらの外的環境条件の変化により腸炎ビブリオの重要な病原因子である3型分泌装置(T3SS)の発現が変動する。しかし、腸炎ビブリオがこのような外的環境条件の変化をどのように感知し応答しているのかは不明な点が多く、本研究ではその理解を目的としている。 腸炎ビブリオのT3SS2発現を活性化する外的因子の一つに胆汁がある。T3SS2遺伝子群の発現増加は転写調節因子VtrAに依存しており、VtrAは下流の転写調節因子VtrBと転写カスケードを構成する。胆汁によってVtrAが活性化されると考えられているが、VtrAの局在を解析するとVtrAは膜結合型転写制御因子であること、レポーターアッセイ系により胆汁刺激によって多量体化が促進されることが明らかになった。また、VtrAのDNA結合ドメインの多量体化により標的遺伝子に対する転写調節活性およびプロモーター結合能が増加した。これらよりVtrAの胆汁による活性化メカニズムとして、胆汁刺激によりVtrAが多量体化し、標的プロモーターへの結合が強まることにより転写調節活性が上昇するというモデルが考えられた。また、腸炎ビブリオのT3SS発現の制御に関わる因子Xを同定した。この因子は特に外的環境条件の変化に応答したT3SS2の発現制御に重要な役割を果たすことも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は胆汁によるT3SS2発現活性化機構として、転写調節因子VtrAが多量体化により標的プロモーターへの結合を促進させることを報告し、胆汁刺激によるVtrAの活性化メカニズムを明らかにした。また、外的環境条件の変化に応答したT3SS2の発現制御に重要な役割を果たす因子を新たに同定することができた。以上より、本研究計画は総合的におおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに同定した腸炎ビブリオのT3SS2発現の制御に関わる因子Xについて、その外的環境条件の変化に応答した発現制御メカニズムを解析する予定である。特にT3SS2の遺伝子発現に重要な転写調節因子VtrAとの制御関係の観点から、VtrAの多量体化による活性化、VtrA-VtrB転写カスケード、VtrAレギュロンなどとの関連を検討し、外的環境条件の変化に応答した腸炎ビブリオT3SSの発現制御機構の分子基盤の理解を目指す。
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