2020 Fiscal Year Annual Research Report
Repression of the spread of antimicrobial resistant bacteria and pathogenic bacteria using the bacterial toxin-antitoxin system
Project/Area Number |
17K08837
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
大塚 裕一 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10548861)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トキシン-アンチトキシン系 / 大腸菌 / ファージ / 抗菌ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は2つの研究項目からなるが、「トキシン-アンチトキシン(TA)系のトキシンの毒性メカニズム」の研究成果は2019年に論文として発表した。今年度はもう1つの項目「TA系のトキシンによる抗ファージ機構」について実験を実施した。本項目の目的はTA系のトキシンが溶原ファージの増殖を抑制する可能性を検証するもので、その成果は形質導入による薬剤耐性菌の蔓延を抑える対策につながることが期待される。形質導入はストレスにより溶原ファージが誘発される過程(誘発)とファージゲノムが細菌ゲノムに組み込まれる過程(溶原化)の2つからなる。昨年度までに、大腸菌K12株がもつTA系のMazE-MazFとRnlA-RnlB が志賀毒素をコードするSp5溶原ファージの誘発と溶原化を抑制する予備的結果を得ていた。これらのTA系のトキシンはともにRNaseであるため、RNA分解が誘発と溶原化を抑制することが示唆される。また、大腸菌K12株はRNaseをコードするTA系を11種類も有するため、これらのTA系も誘発と溶原化を抑制する可能性がある。そこで、この可能性を検証するために11種類のTA系を全て欠失させた株を作製した。11TA欠失株は野生株に比べて増殖の遅延が見られたため、これらのTA系は大腸菌の効率良い増殖に必要であることがわかった。次に、欠失株を用いてSp5ファージの誘発を調べたところ、これらのTA系の複数もしくはどれかが誘発を抑制することが示唆された。現在どのTA系が誘発を抑制するのか同定中である。また溶原化への影響についても現在解析中である。本課題によりRNaseをコードするTA系が形質導入を抑えることを明確にできれば、その成果はTA系の新たな役割を解明したことになり、さらに形質導入による薬剤耐性菌の蔓延を抑制する対策に応用できる可能性がある。
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