2018 Fiscal Year Research-status Report
細菌由来ネクローシス誘導因子BteAファミリータンパク質の機能解析
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17K08838
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
桑江 朝臣 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (60337996)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BteA / ボルデテラ属細菌 / エフェクター / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
百日咳菌を含むボルデテラ属細菌はIII型分泌機構と呼ばれる病原因子分泌装置を有している。本課題ではボルデテラ属細菌のIII型分泌装置より分泌され,哺乳類細胞内に注入されるエフェクターと呼ばれるタンパク質群のうち,BteAと呼ばれるタンパク質に注目して研究を行っている。BteAは哺乳類細胞に注入されると未知のシグナル伝達経路を通して,哺乳類細胞にネクローシス様の細胞死を誘導するが,そのメカニズムに関しての詳細は不明である。BteAが活性化あるいは不活化する哺乳類細胞内シグナル伝達経路を明らかにするために,マウスのすべての遺伝子に対するガイドRNA (gRNA)を含むプラスミド溶液をaddgene社より入手した。これらのプラスミドを大腸菌に導入して,プラスミドを大量精製した。またレンチウイルス粒子を作製するためのヘルパープラスミドも入手し,これらのプラスミドを293T細胞に導入することにより,gRNAを有するレンチウイルス粒子液を得た。このレンチウイルス溶液を用いて,遺伝子欠損RAW264.7細胞を効率よく得るために,Cas9タンパク質をRAW264.7細胞内で安定的に産生する細胞の構築を試みた。Cas9をコードする遺伝子を効率的にRAW264.7細胞に導入するために,Cas9遺伝子をコードするDNA領域を有するレンチウイルス粒子をRAW264.7細胞に感染させ,Blasticidinにより選択することによりCas9産生RAW264.7細胞を得ることに成功した。現在,ボルデテラ属細菌の一つである気管支敗血症菌がBteA依存的にRAW264.7細胞に100%の効率で細胞死を誘導する条件を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BteAが活性化あるいは不活化する哺乳類細胞内のシグナル伝達経路やBteAが相互作用する哺乳類細胞側因子の探索を中心に研究を進めている。それらのシグナル伝達経路を明らかにするために,様々な遺伝子に変異が入ったRAW264.7細胞群を取得するための準備はほぼ整い,今後1年でBteAの標的となる因子の候補を見いだせる可能性が高い。CRISPR-Cas9の系を導入するために,通常であれば情報収集に労力や時間がかかるところであるが,当該研究所に本システムをすでに導入している研究室が存在し,有益な情報を得られたことが,概ね順調に進んでいる理由であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
CRIPR-Cas9のシステムを用いて,BteAが誘導する細胞死に関与するシグナル伝達経路の同定は上記のとおり少しずつ進んでいるが,一方でBteAと直接相互作用する因子についても酵母のtwo-hybrid試験の結果からいくつかの候補が得られてきた。今後はこれらの候補因子が特異的にBteAと相互作用するのか否か,またはその相互作用がBteA依存的な細胞死誘導に必要であるのか否かを解析していく。相互作用に関してはBteAおよび相互作用する因子の組換えタンパク質を精製し,in vitroでpull down試験などを通して解析を行い,さらに特異的な相互作用が認められた場合にはその相互作用に必要なそれぞれのタンパク質内の領域を,部分欠失変異体を用いた実験を行うことにより決定していく。また,BteA全長を哺乳類細胞内で産生させると細胞死を誘導してしまうため,BteAの哺乳類細胞内における局在を免疫蛍光染色などで解析することは困難であるが,上記の試験により,BteA内の哺乳類細胞側因子との相互作用に必要な領域を狭めることが可能になれば,細胞死を誘導せず,かつ哺乳類側因子との相互作用をするような部分欠失変異体を用いてBteAの哺乳類細胞内における局在を解析していく予定である。BteAが相互作用する哺乳類細胞側因子を産生しない,欠失変異細胞をCRISPR-Cas9のシステムを用いて作製し,それらの細胞に気管支敗血症菌を感染させた場合に,BteA依存的な細胞死誘導の効率が変化するか否かを解析する予定である。
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Research Products
(2 results)