2017 Fiscal Year Research-status Report
宿主因子pp32のインフルエンザウイルス複製促進および感染種適合性の分子機構解明
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17K08850
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉山 賢司 筑波大学, 医学医療系, 研究員 (30796454)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 宿主因子 / RNA依存性RNAポリメラーゼ / ウイルスゲノム複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では、主に「宿主因子pp32のインフルエンザウイルスのゲノムRNA複製促進の作用機序」についての研究を先行して行った。 インフルエンザウイルスゲノムRNA複製段階におけるウイルス性RNA依存RNAポリメラーゼ(以降「(ウイルス)ポリメラーゼ」)に対する促進活性に必要とされる宿主因子pp32タンパク質のアミノ酸領域、ならびにポリメラーゼへの結合に必要なドメイン(*1)の決定を行った。さらにpp32(別名ANP32)ファミリーに属するホモログを利用したドメインスワッピング解析により、ウイルス複製促進に重要なpp32アミノ酸領域の絞り込みを行った結果、pp32内部の特殊な領域(*2)が上記促進活性に非常に重要であることが明らかになった。この領域には「宿主-ウイルス間(特に「トリ」と「トリ型インフルエンザウイルス」)での種適合性」に関わると報告された「トリ型特異的に33アミノ酸が挿入される部位」が含まれていた。 上述で得られたpp32ドメイン解析結果をについて、以前我々が解析したpp32の部分結晶構造(未発表)を参考に点変異体のデザイン・作成を行い試験管内ウイルス複製反応における促進活性の評価を試みた。その結果、幾つかの点変異体において顕著な促進活性の低下が確認できた。これらのうちのある点変異については、前述の「ウイルスポリメラーゼへの結合に必要なドメイン(*1)」とは異なる部位のデザインであることから、この部位が「pp32がポリメラーゼに結合(ドッキング)した後の促進制御作用」に関与すると推測している。また別の点変異体については、上述の「特殊領域(*2)」内に設計されており、pp32促進作用におけるダイナミックな構造変化の可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
別途計画していた「宿主因子pp32およびインフルエンザウイルスRNAポリメラーゼの構造学的解析」について、ウイルスポリメラーゼの組換え体調整に難航した。なお、試行錯誤により、現在は良質な組換え体の調整法確立が見込めている。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」に記載した一連の研究結果をまとめ、学術雑誌に発表することが目下の方策である。そのために現在のところ、pp32によって促進制御を受けるウイルスポリメラーゼにも着目した構造学的アプローチを試行中である。具体的には化学的修飾法を利用したプロテインフットプリンティング法によって「宿主因子pp32およびインフルエンザウイルスRNAポリメラーゼ」複合体において各因子が結合・接触している領域を立体構造学的に決定することで、pp32のウイルスゲノムRNA複製促進メカニズムをより深く考察することを目標とする。
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Causes of Carryover |
研究計画の一部に「やや遅延」が生じ、当初予定していた研究・実験が未試行であるため。なお、次年度分として請求した助成金は当初の研究計画通りに使用する予定である。
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