2017 Fiscal Year Research-status Report
肝炎ウイルスの増殖制御に関わる細胞内アネキシン分子の機能解析
Project/Area Number |
17K08857
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
阿部 隆之 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (90403203)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | C型肝炎ウイルス / アネキシン / 細胞間極性 / タイトジャンクション |
Outline of Annual Research Achievements |
C型肝炎ウイルス(HCV)の複製・増殖に及ぼす、細胞内アネキシン分子の機能解析を実施した。具体的には、肝細胞にて発現の高かったアネキシン2、4及び5に対するsh-RNAiを用いた遺伝子発現抑制細胞株を作製し、HCV感染に伴う影響を検討した。その結果、アネキシン2及び5の発現を抑制した肝細胞では、HCVのRNA発現レベル、上清中のウイルス力価、細胞内のHCV抗原発現レベルの亢進が認められた。これらの結果は、HCVレプリコン細胞を用いた実験系でも同様に観察されたことから、ウイルスの複製レベルに対するアネキシン分子の干渉作用の影響が示唆された。これらの結果から、細胞内アネキシン分子によるHCVの増殖抑制因子としての可能性が示唆された。ウイルスの増殖抑制には、様々な内因性の自然免疫分子の関与が示唆されている。しかしながら、アネキシン2及び5の発現抑制は、RIG-I/IPS-1経路を介した自然免疫応答シグナルには影響を及ぼさなかったことから、自然免疫応答の調節を介した干渉作用の影響ではないことが示唆された。HCVシュードタイプウイルスを用いた感染初期過程の影響を調べたが、アネキシン2及び5の発現抑制の影響は観察されなかった。興味深いことに、HCVの侵入過程及びCell-to-cell感染に関与することが示唆されている、細胞間極性タンパク質の局在の変性(dis-assembly)が、アネキシン2及び5の発現を抑制した細胞株にて強く観察された。クローディンやオクルーディンなどの細胞間極性タンパク質は、HCVの感染過程に必須の細胞内因子である。その一方で、HCV感染やHCVレプリコン細胞株でもアネキシン発現抑制細胞株と同様の細胞間極性タンパク質の局在の変性(dis-assembly)が強く観察された。現在、その詳細な分子機序解明に取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の具体的な成果として、1)細胞内アネキシン分子のHCV増殖抑制因子としての機能が明確に示せたこと、2)またその作用機序の一端として、細胞間極性タンパク質の恒常性維持の破綻が関与している可能性が示せたこと、の2点が挙げられる。細胞内アネキシンは、カルシウム依存的なリン脂質結合タンパク質としても知られており、PKCシグナル経路を介した細胞骨格制御及び細胞間極性の恒常性維持に重要な役割を有することが報告されている。当初の計画では、アネキシンの相互作用分子の探索よりその作用機序の解明に取り組む予定であったが、上記の2)の項目の成果が明瞭に得られたことから、現在、PKCシグナル経路及び細胞間極性の恒常性維持の影響に焦点を当て、その分子機序解明に取り組んでいる。そのため、次年度の予定であったCRISPR/Cas9システムを用いたアネキシン機能欠損細胞株の作製にもすでに着手できており、概ね順調に計画が進行しているものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には、当初の研究計画のマイルストーンに従って研究を遂行する予定である。 現在までの成果に対する作用機序の一端に、PKCシグナル経路の関与が示唆されたが、研究代表者の所属する神戸大学ではPKCシグナル経路の研究では世界をリードする成果を上げており、それらのフィードバックを十分に得られる環境が期待される。また、PKCに対する研究資材等も、コマーシャルベースで充実しており、今後、円滑に研究が遂行できることが期待される。一方で、現時点で細胞間極性の機能等を定量化できる手法を模索する必要性が迫られており、この点に関しては早急に情報を集める必要がある(共同研究者の参画も必要になる可能性がある)。
|