2017 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism of Sortilin reduction by prion infection and its application to therapeutic method development
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17K08859
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
内山 圭司 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 准教授 (60294039)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プリオン病 / ソーティリン / 異常プリオン / プリオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プリオン感染によるソーティリン発現量低下機構の解明および、ソーティリン発現回復因子の同定とその作用機序の解明により、ソーティリン発現低下の抑制と発現量回復によるプリオン病治療の有用性の検証を目指している。平成29年度は、以下の研究成果を得た。 プリオン感染によるソーティリン発現量低下機構の解明に関しては、これまでの研究結果から、プリオン感染におりソーティリンがリソソームにおいて過剰に分解されているためであることが明らかになっていた。このことは、プリオン感染が、レトロマー複合体によるソーティリンのトランスゴルジネットワークへの回収を障害してるためソーティリンのリソソームでの過剰分解が生じていることを示唆している。そこで、ソーティリンとレトロマー複合体を構成するVPS35(ソーティリンと直接結合することが報告されている)との共局在を非感染細胞およびプリオン感染細胞において確認した結果、プリオン感染細胞において明らかにこれらの共局在が低下していた。そこで、VPS35過剰発現によりソーティリン発現量が回復するのかを確認したが、VPS35のmRNAレベルは上昇しているにもかかわらず、蛋白レベルではVPS35発現量は増加しておらず、Sortilin発現量回復には至らなかった。 Advanced DMEMに含まれる未知のソーティリン発現回復因子の同定とその作用機序の解明に関しては、Advanced DMEM培地に加えられた15種類の添加物各々を通常のDMEM培地に添加した培地を作製し、この培地によりプリオン感染細胞を培養し、ソーティリンおよび異常プリオン発現量を確認した。その結果、エタノールアミンのみが異常プリオン低減および、ソーティリン発現量回復を引き起こすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プリオン感染によるソーティリン発現低下機構の解明に関しては、非感染細胞およびプリオン感染細胞におけるソーティリンとレトロマー複合体(その構成因子であるVPS35)との相互作用の解析において、プリオン感染によりこれらの相互作用が低下していることを明らかにした。また、未知のソーティリン発現回復因子に関しても研究計画に従いエタノールアミンが唯一目的とする因子であることを明らかした。これらは、計画に沿って得られた当初期待された結果であることから、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の結果から、ソーティリンとレトロマー複合体構成因子であるVPS35との相互作用が低下しているため、ソーティリンのリソソームでの分解が亢進していると考えられた。そこで、ソーティリン/レトロマー複合体相互作用の増強が、ソーティリン発現量の回復さらに、異常プリオン低減に有効に作用するのかを確認する。前年度の結果、VPS35は何らかの機構により蛋白レベルでの発現量が制御されており、過剰発現されないことが明らかになった。これは、プロテアソームによる分解の亢進がその原因ではないかと考えられる。そこで、VPS35の過剰発現下でのユビキチン化の亢進が確認された場合、非ユビキチンか変異体VPS35を作製しその過剰発現を試み、ソーティリン発現量回復および異常プリオン低減効果を検証する。ソーティリは、エンドソーム膜上に結合したレトロマー複合体によりのゴルジネットワークへされる。そこで、レトロマー複合体の膜への結合に重要なソーティングネキシンの過剰発現もまた、ソーティリンのTGNへの回収を促進するのではないかと考えられこれを確認する。 ソーティリン発現量回復因子として同定したエタノールアミンが、生体においても有効に作用するのか、マウスにおけるプリオン感染実験において検証する。プリオン感染マウスにおいてソーティリン発現量が低下することはすでに報告している。そこで、エタノールアミン投与が、ソーティリン発現回復さらに異常プリオン蓄積抑制に有効に作用するのかを検証する。マウスにおけるプリオン感染実験には、約6カ月程度を有するため投与量、投与経路の検討、再実験も含め、次年度へ継続して実施する。また、培養細胞系において、エタノールアミンの作用機序を解明を進める。
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Causes of Carryover |
(理由)Advanced DMEM培地中の未知のソーティリン発現回復因子の同定において、計画当初は複数の因子の作用であることを想定していたが、エタノールアミン単独でその効果を示すことが明らかになり、想定していた実験を実施する必要がなくなったため。また、同定したソーティリン発現回復因子がエタノールアミンという非常に安価な物質であったことから、次年度への繰り越しが生じた。 (使用計画)H30年度研究計画遂行のために、血清・培地等の細胞培養用試薬、プラスチック消耗品を購入する。VPS35発現抑制機構解明のために、プロテアソーム阻害剤、抗ユビキチン抗体、レトロマー関連因子に対する抗体等の生化学実験用試薬を購入する。VPS35変異体作製、レトロマー関連因子発現ベクター作製等に必要な分子生物学実験用試薬を購入する。塩基配列確認等に共通機器使用料が必要である。また、エタノールアミンの生体における有効性を検証するために、プリオン感染実験用マウスを購入する。マウスによるプリオン感染実験ために、動物実験施設使用料が必要である。さらに、ウイルス学会等の学術集会において、H29年度の研究成果を積極的に発信することを計画している。
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