2018 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of AIRE-dependent gene-expression network which controls the differentiation of mTECs
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17K08885
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
西嶋 仁 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (60425410)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | AIRE / 自己免疫疾患 / 1型糖尿病 / Xcr1陽性樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
AIREの欠損が臓器特異的自己免疫疾患をもたらすので、逆にAIRE機能を高めることによって自己免疫疾患の病態が改善されるのか検討するために、human AIREを発現するトランスジェニックマウス (Tg) をNODマウス背景において樹立した。意外にも、AIREの発現量に依存して多発性筋炎様の病態を自然発症することを見いだし、解析結果の論文報告を行った。さらに計画通り、mTECのトランスクリプトーム解析を行い、Aire-KOで発現が低下して、human AIRE-Tgで発現が増加する遺伝子群を自己免疫病態に関与するAIREのターゲット因子として絞り込みを行った。 Tgマウスの解析中に、NODマウス特有の糖尿病発症、およびラ氏島炎が、Tgの1ラインで完全に抑制される現象を見いだした。本研究の実施計画には含まれていないが、AireノックアウトNODマウスはラ氏島炎が観察されない等、Aire機能と糖尿病発症には関連が認められるため、Tgの糖尿病抵抗性について解析を行った。 膵ラ氏島自己抗原を認識するTCR発現CD8 T細胞を産生するTgマウス(NY8.3)、もしくはCD4 T細胞を産生するTgマウス(BDC2.5)を用いて、末梢における抗原提示能を検証した。その結果、NY8.3由来CD8 T細胞もBDC2.5由来CD4 T細胞も、WTに移入した場合は膵リンパ節で増殖するのに対して、Tgに移入した場合には増殖が低下しており、膵臓抗原の提示機能が低下していることが判明した。Tgの膵リンパ節において、Xcr1陽性樹状細胞 (cDC1) の減少を認めており、Tgマウスは樹状細胞の膵臓抗原の提示機能が低下した結果、糖尿病発症に抵抗性を獲得したと結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
human AIREを発現するトランスジェニックマウス (Tg) におけるmTECの遺伝子発現を次世代シークエンサーによって解析した。Aire-KOで発現低下する遺伝子群の大部分は、トランスジーン (Aire-KO, Tg) によってその発現が回復していた。TgによってAire-KOを相補できる個体の観察結果が、mTECの発現解析と相関していることを示すことができた。さらに多発性筋炎様の病態を発症するTgで発現が増加する遺伝子群を同定した。それらの遺伝子群からさらに、Aire-KOで発現が低下する遺伝子群にも含まれる因子に着目し、自己免疫病態に関与するAIREのターゲット遺伝子として候補遺伝子を絞り込み、特定の遺伝子に着目した。現在CRISPR-Cas9システムでノックアウトマウスを作製中である。 一方、NODマウスの糖尿病発症に、human AIREの発現が抑制的に機能していることが判明した。骨髄移植によるキメラマウスの解析によって、予想に反して骨髄由来細胞がTgである時に糖尿病抵抗性を獲得した。胸腺外のAire発現細胞 (eTAC) は海外のグループでも報告されており、Aireの機能解析を胸腺に限定せず、末梢のAire発現細胞についても検討した。 実際に膵ラ氏島自己抗原を認識するTCR発現マウスを用いた解析で、膵臓抗原の提示機能がTgでは低下していることを証明した。NODマウスの糖尿病発症において、Xcr1陽性樹状細胞 (cDC1) の必要性が報告されている結果と一致して、Tgの膵リンパ節ではcDC1の減少を認めた。これらの結果より、Tgマウスは樹状細胞の膵臓抗原の提示機能が低下した結果、糖尿病発症に抵抗性を獲得したと結論づけて論文作製中である。
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Strategy for Future Research Activity |
Aireノックアウトマウス、huAIREトランスジェニックマウスを使用して、自己免疫病態に関与するAIREのターゲット遺伝子として候補遺伝子を絞り込み、特定の遺伝子に着目した。現在CRISPR-Cas9システムでノックアウトマウスを作製中であり、今後の解析に期待している。 しかしながら、胸腺髄質上皮細胞 (mTEC) においてAIREの発現を高めるために用いた手法が、MHCクラスIIプロモーターの制御下でhuman AIREを発現させたトランスジェニックマウスであったため、論文投稿の際に次の2点に対する批判があった。問題点1)導入遺伝子の発現が本来のAire遺伝子とは発現時期・細胞種が異なること、問題点2)導入遺伝子そのものに種の違いがあることである。こうした点をふまえ、内在性Aireプロモーター制御下に付加的にマウスAireを発現するノックインマウスを新たに樹立しており、生理的にAireを発現する細胞集団特異的にAireを過剰に発現することを確認しており、現在表現型を観察している。 また、Aire遺伝子座にGFP融合human AIREをノックインしたマウス (AGF-KI)を用いた解析では、脾臓、リンパ節の細胞集団にGFPシグナルを検出しており、骨髄由来細胞にもAireが発現する細胞種を確認できている。海外のグループが報告している胸腺外のAire発現細胞 (eTAC) とは異なる遺伝子発現を認めている。AireノックアウトNODマウスはラ氏島炎を認めないことと、膵臓リンパ節でGFPシグナルをより顕著に検出できることから、I型糖尿病における膵臓リンパ節Aire発現細胞の機能を検討する計画である。
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Research Products
(8 results)