2018 Fiscal Year Research-status Report
シグナル伝達分子の細胞質内アセチル化によるB細胞分化機構の解明
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17K08892
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
桑原 卓 東邦大学, 医学部, 准教授 (40385563)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アセチル化修飾 / B細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルスや細菌毒素の中和に有効な抗体はB細胞が産生するタンパク質で、獲得免疫系に不可欠の役割を担っている。B細胞は骨髄で造血幹細胞から分化する。この分化過程は、B細胞の前駆細胞を取り囲むニッチェに由来する刺激に依存する。インターロイキン-7(IL-7)はB細胞分化を支持する要因の1つである。IL-7受容体(IL-7R)はIL-7Rα鎖と共通γ(γc)鎖のヘテロ二量体で構成される。IL-7Rα鎖の細胞質内領域に存在するチロシン残基(Y449)は下流の情報伝達分子Stat5の結合部として重要である。チロシンリン酸化酵素JakはIL-7Rα鎖の細胞質膜直下に結合し、リガンド依存性にY449をリン酸化する。
Jak結合領域やY449以外の細胞質内領域の機能ドメイン(モチーフ)を探索する目的で、いくつかの領域欠損IL-7Rα鎖を作製した。プロB細胞株Ba/F3細胞やT細胞株CTLL-2細胞でこれらの変異IL-7Rα鎖を発現させた。IL-7誘導性のY449のリン酸化を引き起こすことのない変異体ではStat5の活性化は認められなかった。Stat5の活性化は細胞増殖とB細胞分化を誘導することが既に知られている。実際に変異IL-7Rα鎖をIL-7Rα鎖欠損マウス由来の前駆細胞で発現させると、Stat5活性依存性にB細胞の分化が進行した。しかしながら、Stat5の活性化を誘導できるが、B細胞分化をサポートできない変異体が認められた。この変異IL-7Rα鎖によるStat5の活性化を詳細に調べたところ、IL-7誘導性のStat5リン酸化と限定消化が検出された。一連の結果を論文として発表した。
IL-7によるStat5の活性化と細胞増殖はB細胞分化において同時に起こるものとされてきた。今回の変異IL-7Rα鎖が示した結果はこれまでの考え方とは明確に異なる。欠損領域で形成される複合体の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B細胞分化を制御に関与するIL-7Rα鎖の新規機能領域を見出し報告した。この領域の機能を具体的に明らかにするため、遺伝子改変マウスを作製した。論文発表が出来たこと、マウスの作製が済んだこと等を考慮して順調な進捗と判断した。
順調に交配が進んでいる。解析可能個体が準備できれば、このまま順調に進むと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの検討から、IL-7Rα鎖欠損マウスはIL-7シグナルを充分に伝達できないため、B細胞成熟を支持しないことが解っている。今年度作製した変異マウスにおいて、B細胞分化がどのステージで止まっているかを明らかにする。分化が単に止まっているのか、あるいは、別系列の細胞へ分化しているのかについても明らかにしていく。
B細胞の前駆細胞はIL-7刺激によりStat5を活性化する。このとき、Stat5はリン酸化だけでなくアセチル化されることが解っている。変異IL-7Rα鎖を発現する前駆細胞では、IL-7刺激によるStat5のアセチル化が亢進することと限定消化がおきることも見出している。IL-7Rα鎖の欠失領域がアセチル化や限定消化に対してどのように関係するかを明らかにする。IL-7Rに結合するタンパク質を質量分析計で同定する。アセチル化Stat5の機能とB細胞成熟の停止との関係を明らかにする事を通じて,アセチル化の重要性を見出していく。
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Causes of Carryover |
予定していた遺伝子改変マウス作製費用の支払いを2019年度にずらしたため、次年度へ繰り越した。
2019年度はマウス作製費用を支払う。このマウスの飼育費用も予定している。マウス実験では、フローサイトメーター解析用抗体やアセチル化タンパク質解析用の試薬を多く使用する。マウス由来の細胞を培養する際の培地などの支払いも予定している。2019年度は多めの予算額ではあるが、試薬消耗品を多数使用するので算段通りに進むと考えている。
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