2019 Fiscal Year Research-status Report
シグナル伝達分子の細胞質内アセチル化によるB細胞分化機構の解明
Project/Area Number |
17K08892
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
桑原 卓 東邦大学, 医学部, 准教授 (40385563)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アセチル化 / B細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗原特異的な異物排除を助ける抗体は獲得免疫系の重要な構成要素で、B細胞が産生する。B細胞は骨髄で造血幹細胞から分化する。成熟過程には骨髄中の様々な要因が必要であるが、インターロイキン-7(IL-7)はその要因の1つである。IL-7受容体(IL-7R)はIL-7Rα鎖と共通γ鎖のヘテロ二量体で構成される。IL-7Rα鎖の細胞質内領域にあるチロシン残基(Y449)は下流の情報伝達分子Stat5の結合部として重要である。
Y449以外の機能的モチーフを探索する目的で細胞質内領域を幾つかのセグメントに分け、各欠失変異体を作製した。多くの変異体は、未熟細胞からB細胞への成熟、Stat5のリン酸化(活性化)および細胞増殖が揃って進行するか(即ち正常)、すべて障害されるかであったが、ある領域の欠損変異体だけは、Stat5のリン酸が生じるが、細胞増殖と成熟が障害されていることを見出した。この変異体ではStat5のアセチル化が亢進されている可能性が浮かび上がった。
IL-7によるStat5の活性化と細胞増殖はB細胞成熟過程で同時に生じるものとされてきた。今回見出したIL-7Rα鎖欠失変異体受容体による結果は、これまでの考え方とは異なり、新しい知見を示唆している。欠失領域にはこれまで知られていない複合体が結合しており、これがB細胞の成熟を決定していることが示唆される。この分子機構を明らかにしていくことが今後の目標となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IL-7受容体α鎖に新規サブドメインを見出し、この部分を欠失するマウスを作製した。表現型を解析してB細胞分化異常を解析する予定でいたが、順調な繁殖管理ができなかった。このため解析が若干遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した新規サブドメイン欠損マウスを解析し、B細胞分化異常を調べる。B細胞系列への分化が停滞しているのか、それとも他の系統へ分化を進めているのかについて検討する。
IL-7はB細胞の成熟過程を支えている。IL-7刺激により転写因子Stat5が活性化する。このときStat5はリン酸化だけでなくアセチル化されることが分かっている。サブドメインの欠損がこのアセチル化を亢進させることも見出した。アセチル化の亢進と欠失したサブドメインの分子的な関係性を明らかにしていく。IL-7受容体にアセチル化酵素や脱アセチル化酵素をはじめとする複合体(シグナルソーム)が結合している可能性を念頭に検討する。この複合体とB細胞成熟の関係についても検討する。
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Causes of Carryover |
作製した遺伝子改変マウスの繁殖が順調に進まなかったため、見込んでいた飼育管理費用が次年度使用となった。繁殖状況が改善されれば、飼育費用が消費されると同時に、解析用試薬の消費が増えるため、余剰は解消されると考えられる。
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Research Products
(4 results)